第242回目は「マスカレード・ホテル」です。
2019年の日本の推理映画です。
*以降ネタバレ注意です。
子供の頃のある日、学校の担任の先生が、こんな話をしてくれました。
「新宿にあるホテルの宿泊客で、1番多い名前は何か?」という問題です。
本当かどうか解りませんが、答えは
「新宿太郎」だそうです。
つまり、多くの人が偽名を使って宿泊しているというのです。
犯罪者なのか、お忍びなのかは解りませんが、何か理由があって正体を隠しているのでしょう。
その為、ホテルのフロントのカウンターの裏側は指名手配の写真が、ビッシリと並んでいるそうです。
私はこの話が凄く気に入ったので、よく周りの人にしていました。
オチが弱いので、カウンターの裏には指名手配の写真と、ショットガンがビッシリと並んでいるに変えて話していました。
なんとなく嘘っぽさが増しましたが、それでも「新宿太郎」の話は本当かもしれないと妙に納得していたような気がします。
さて、この映画は東京のホテルを舞台にした犯罪群像劇です。
物語はすでに、三つの連続殺人事件が発生した状態から始まります。
殺人現場には謎の暗号が残されていました。
ついでに言えば、暗号も解読された状況から物語は始まります。
暗号には次の犯行現場が記されていました。
次の犯行現場は「ホテル・コルテシア東京」です。
暗号を解読した主人公の新田浩介をはじめとする警視庁捜査一課はホテル・コルテシア東京に潜入捜査をすることになります。
新田はホテルのフロントマンとして配置されました。
新田の教育係として山岸尚美が任命されます。
新田と山岸は性格と信条が真逆ですが、犯人逮捕および、犯行を未然に防ぐために協力していきます。
果たして犯人は何者なのでしょうか?
犯人の標的は誰なのでしょうか?
是非、観てみてください。
この映画は私にとっては抜群に面白かったと思います。
とにかく登場人物が多くて、誰が犯人なのかなかなか判りません。
どいつもこいつも怪しい顔ばかりです。
客もホテルマンも刑事さえも怪しく思えてきます。
客は客で面倒くさい客ばっかりです。
この客……お客様たちを上手く捌いていくところが、この映画の面白いところでもあります。
接客業をなさっている方なら、共感を得るかもしれません。
人を疑うことが仕事の新田と、人を信じることが仕事の山岸は反発し合いながらも共闘していきます。
映画でよくありがちなシチュエーションかもしれませんが、非常に面白かったと思います。
そもそも、いつ起こるか解らない、まだ起こっていない事件で、警察が潜入捜査までするかは疑問ですが。
刑事がホテルマンに扮するというのは見事なアイデアだったと思います。
刑事ものとホテルもののハイブリッドな作品です。
面白くて良く出来た優秀な作品です。
実は私は推理ものは得意なのです。
簡単な作品なら動機やトリック、犯人を見破る自信があります。
私の個人的な見解では、犯人が最後の最後まで分からないというのは優秀な作品ではありません。
優秀な推理映画はヒントを少しずつ映像に混ぜてあるのです。
もちろん嘘のヒントもたくさん仕込んであります。
1番ベストなのは主人公が犯人を見抜く瞬間と視聴者が犯人を見抜くタイミングがシンクロした時だと思っています。
視聴者が随分と先に仕掛けを見破ってしまうと、退屈な作品になってしまいます。
ある程度、主人公と同レベルの推理状況を維持することが大切です。
ヒントがまるでなく、いきなり「犯人はコイツです」と言われても納得できない可能性があります。
確かに意外な人物が犯人だったりすると「ギョッ!」と驚きはしますが。
あと出しで、証拠をアレコレ並べられても「ふーん」とシラけてしまいます。
大事なのはドンデン返しではなく、ミスリードを誘うことなのです。
推理映画の醍醐味は視聴者が推理を楽しめることにあります。
なんて、偉そうに素人が推理映画について語ってみました。
実はこの映画も私にとっては一応、簡単な推理映画でした。
私としては自分の洞察力を自画自賛するところです。
ところが、怪しいやつが次から次へと出てくるもんで、確信を持てずにいました。
そして、不覚にも
「ギョッ!」っとなってしまいました。
とにかく、めちゃくちゃ驚いてしまいました。
私に「ギョッ!」と言わせるなんて、素晴らしい。
ただ単に私がマヌケだっただけかもしれません。
完全に不意打ちを喰らいました。
皆さんにも是非「ギョッ!」って言って欲しいです。
絶対にその「ギョッ!」は気持ち良いはずです。
これだから推理映画は面白い。
是非、観てみてください。
因みに、明石家さんまが隠れキャラとして出演しているので探してみてください。
私は全く気づきませんでした。