カズマの一期一映日記

映画の感想と雑談

AKIRA

 

 

第189回目は「AKIRA」です。

f:id:kazuma_kazama:20210322230542j:image

出典Amazon.co.jp

 


1988年の日本のアニメ映画です。

 


*以降ネタバレ注意です。

 


私がまだ少年だった頃に公開された映画で、世界中で高評価だったように記憶しています。

 


私の友人も大絶賛していました。

 


当時、友人のススメで原作コミックを少し読みましたが、私には何が面白いのか理解できませんでした。

 


内容も難しく、少々読んだところで解るはずがなかったのかもしれません。

 


コミックも大判で値段も高く、自分で購入してじっくり読もうという気にはなれませんでした。

 


コミックを全部読んだのは、ごく最近のことになります。

 


友人が圧倒的な画力と書き込みの緻密さを、評価していたことを思い出し、懐かしい気分になりました。

 


しかし、私には絵もストーリーもごちゃごちゃしているという印象でした。

 


面白いとは感じましたが、最後まで読んだものの、内容を理解していないように思います。

 

 

 

 


ちょっと時間を置いて、また読みたいと思います。

 


さて映画の方はと言いますと、原作よりもシンプルでかなり改変がありますが、完成度の高い作品となっていました。

 


物語は1988年の東京で謎の爆発があり、東京が壊滅した世界です。

 


それから31年後、2019年ネオ東京は軍が管理している社会になっていました。

 


暴走族の金田と鉄雄は仲間たちと、別の暴走族との抗争に突入しました。

 


そんな中、鉄雄は老人のような少年にバイクで、接触してしまいます。

 


正確には接触する前に鉄雄のバイクが爆発してしまいます。

 


そして、鉄雄は駆けつけた軍に連れ去られます。

 


さて、鉄雄の運命は?

 


老人のような少年の正体は?

 


AKIRAとは一体なんなのか?

 


是非、一度観てみてください。

 


映画の方も描き込みが凄くて映像美が感じられます。

 


退廃した東京が細かく描かれています。

 


人物の動きや表情も滑らかです。

 


あと、レーザー兵器の描写は格好いいと思いました。

 


音声も迫力があり、BGMも印象的です。

 


中でも宇宙空間で無音になるところは制作者のセンスを感じます。

 


制作技術の面では高評価も頷けると思います。

 


私も納得するところです。

 


問題はストーリー部分です。

 


本筋としては金田と鉄雄の友情と戦いの物語であり。

 


鉄雄の金田に対するコンプレックスなどは充分なほど伝わっていますが。

 


もう一方の、金田と行動を共にする反政府ゲリラのケイたちの思想があまり伝わってきませんでした。

 


そもそも軍の思惑だとか政府の思想が不鮮明なので、何を争っているのかが解らない感じがします。

 


軍が研究している「AKIRA」を探ろうと反政府ゲリラが行動しているのは解るのですが。

 


反政府ゲリラの黒幕は「AKIRA」について知り得るポジションの人物だったので。

 


あまり意味がないように思いました。

 


もちろん私の理解力がないだけかもしれませんが。

 


そんなこんなで、私は半分くらいしかこの映画を理解していないと思います。

 


でも「AKIRA」がなんであるかは、私なりに解釈しているので問題はありません。

 


私は超能力ものが結構好きなので、かなり楽しめました。

 


近未来SFが好きな人は是非、観てみてください。

 


映画と原作コミックのどちらもオススメしておきます。

 


そう言えば、この映画は2019年が舞台なんですが、なんと2020年に東京オリンピックが開催されることになっているのです。

 


なんか凄くないですか?

 


まさか予知能力ですかね。

 

 

 

 

青のSPー学校内警察・嶋田隆平ー

 

 

第188回目は「青のSPー学校内警察・嶋田隆平ー」です。

 


2021年の日本のTVドラマです。

f:id:kazuma_kazama:20210318140605j:image

出典ktv.jp


*以降ネタバレ注意です。

 


もし、学校に常駐するお巡りさんがいたら、という設定の実験的なドラマです。

 


私は学校に警察を常駐させることには賛成です。

 


世の中には学校が聖域で、教師は聖職者であるという考えもあると思いますが。

 


実際の学校は魔窟です。

 


生徒も教師も人間ですから、時には悪いことだってするでしょう。

 


警察が学校にいるなんて息苦しいかもしれませんが、生きやすくなる人だっていると思います。

 


学校内で立場の弱い人たちは被害者になりやすいので、特にです。

 


私はどちらかと言うと、管理社会には賛成なので、学生だろうと教師だろうと、犯罪者は警察に突き出してしまえば良いと思います。

 


起訴、不起訴になるかは逮捕後の話です。

 


抑止力としての効果は期待できると思います。

 


というわけで、スクールポリス制度には私は賛成です。

 


ちなみに私は学生に法律の授業を導入するべきだと考えています。

 


交通ルールから始めて、重大な犯罪と刑罰を教えておいた方が良いと思います。

 


なぜ法律の授業がないのか、私には不思議でなりません。

 


さて、物語の方ですが、公立の赤嶺中学は試験的にスクールポリス制度を導入することになります。

 


スクールポリスに志願した嶋田隆平は元捜査一課の敏腕刑事でした。

 


赤嶺中学は表向きは普通の中学校ですが、中身はイジメ、薬物、盗撮、教師のセクハラ、パワハラ、マタハラが横行していました。

 


嶋田隆平は一つずつ事件を解決していきますが、嶋田隆平には赤嶺中学に隠されたある事件を探るという目的がありました。

 


果たして赤嶺中学に隠された秘密とは?

 


是非、一度観てみて下さい。

 


今ならU-NEXTで観ることができます。

 


私は結構、面白いと思いました。

 


しかし、残念ですがあまりメッセージ性の強い作品とはなりませんでした。

 


もっと学校にはびこる犯罪を解決して社会に一石を投じる様な作品を期待していましたが、わりとソフトな内容にはなっています。

 


途中から嶋田隆平の個人的な捜査がメインとなってしまっていることが原因です。

 


まあ、たいがい問題だらけの学校ですが、実際にはドラマの30倍(一校あたり)くらいの問題を抱えているに違いありません。

 


個人的にはそう思います。

 


学校には隠蔽体質があって、イジメやら犯罪を無かったことにしたり、警察沙汰にせずに穏便に済ませるケースがあると思います。

 


私はあまり良いこととは思いません。

 


警察が学校に介入するべきじゃないという考えの人もいると思いますが、気軽に警察に相談できるので、良いところもあると思います。

 


生徒も順応しているし、私はスクールポリス制度はアリなんじゃないかと思いました。

 


ドラマを観てスクールポリスの可否を考えてみるのも面白いと思います。

 


ただ「逮捕されても案外、平気だった」と勘違いしてしまう人もいるかもしれません。

 


ドラマとしては、まずまず見応えのある作品だったと思います。

 


学校と警察の考え方の違いも面白いです。

 


あと、スクールポリスが盗聴器を仕掛けているので違法捜査だと思いました。

 

 

 

シン・エヴァンゲリオン:ll

第187回目は「シン・エヴァンゲリオン劇場版:ll」です。

f:id:kazuma_kazama:20210315165409j:image

出典evangelion.co.jp

 


2021年のアニメ映画です。

 

 

 

*以降ネタバレ注意です。

 

 

 

ヱヴァンゲリヲン新劇場版4部作の最終章です。

 


1995年のTVシリーズのリメイク版でもあり、続編でもあります。

 

 

早速、劇場まで観に行ってきました。

 


延期に次ぐ延期で、待ちに待った作品でもあります。

 

 

最新の映画なのであまり内容には触れず、エヴァンゲリオンそのものについて語っていきたいと思います。

 


とは言え一応、映画の感想だけは言っておきます。

 


結論から言えば

 


「もの凄くスッキリ!しました」

 


エヴァンゲリオンといえば、難解で謎が多く、しかもほとんどの謎が放置したまま、消化不良を起こす作品というイメージですが。

 


なんだか綺麗に終わりました。

 


スッキリし過ぎて、逆に気持ち悪いくらいです。

 


正直なところ、マトモなエンディングなんて期待していなかったのですが、完璧な終幕だったと思います。

 


是非、観ていただきたいと思います。

 


ただし、この映画である程度の感動を得るためには、新劇場版の前3作に加えて、TVシリーズと旧劇場版を鑑賞しておかなければなりません。

 


もちろん、新劇場版だけでも充分に楽しめると思います。

 


しかし、私としてはTVシリーズから順に観ることをお勧めします。

 


物語は南極で起こったセカンドインパクトと呼ばれる現象で、人類の半数が失われた地球が舞台です。

 


南極の氷は蒸発し、東京は海の底に水没して、地軸は狂い日本は常夏の国となっていました。

 


セカンドインパクトから、15年後

 


2015年、主人公、碇シンジは父の碇ゲンドウに呼ばれて第3新東京にやって来ました。

 


時同じくして、「使徒」と呼ばれる未知の生命体が街を襲って来ます。

 


シンジは父に人造人間ヱヴァンゲリヲンに乗って戦うことを迫られます。

 


果たしてシンジは人類を救うことができるのでしょうか?

 


というストーリーです。

 


興味がある人は是非観てみてください。

 


エヴァンゲリオンといえば、マニアックな印象があると思います。

 


それだけに、敬遠している人も多いのではないでしょうか?

 


その通りです。

 


間違いなくマニアックです。

 


セカンドインパクト人類補完計画セントラルドグマ、マイナス宇宙など、マニア心をくすぐるワードが次々に出て来ます。

 


そこに知的好奇心が湧き、答えを求めて次々と観てしまうのです。

 


しかし、謎が増えるばかりで、一向に解き明かされる様子はありません。

 


グイグイと引き込まれていきます。

 


しかも、人間関係はドロドロで生々しく、時には観ていられないほどの羞恥を感じさせます。

 


ちょっと気の弱い少年が鑑賞すれば、心を病んでしまうのではないかと思ってしまいます。

 


しかし、最後には全てが昇華されるのではないかと期待して観てしまうのです。

 


TVシリーズでは理解不能の最終回を迎え。

 


旧劇場版では、TVシリーズの最終回をリメイクしたものの、難解な狂気の映像となっています。

 


そして25年目にして、やっと呪縛から解放されました。

 


まさか、この作品がマトモな最後を迎えるなんて、誰も考えもしなかったのではないでしょうか?

 


主人公が救われるなんて思いもしませんでした。

 


是非ともTVシリーズの絶望感を味わってから新劇場版を観て欲しいです。

 


スカッとします。

 


難しい話をサラッと流せる人は気楽に楽しんで下さい。

 


基本的には親子の絆の物語です。

 


最終的な敵の目的は、人類補完計画というものなのですが、簡単に言うと「使徒」の力を利用して、人類を一つの生命体にしてしまおうというものです。

 


一つの生命体になれば、イジメも差別も戦争もなくなるというわけです。

 


はっきり言って、余計なお世話です。

 


エヴァンゲリオンのおかげで、そんな作品が圧倒的に増えた気がします。

 


精神が一つになるとか、ネットワークで人類が一つになるとか。

 


そういえば綾波レイみたいなヒロインも増殖しました。

 


影響を受けすぎではないでしょうか?

 


究極には、そこに行き着くのかもしれませんが、人間たるを捨ててまですることではないような気がします。

 


戦争や差別を肯定するわけではありませんが、何か別の方法を考えて欲しいです。

 


そして、アニメ制作者には、何か別のオチを考えて欲しいです。

 


父との対話を経て少年が青年へと成長する良い作品でした。

 


さて、シンジくんも無事に青年へと成長したことだし、私もそろそろ大人にならなければ、と感じました(現在四十代)。

 

 

西部戦線異状なし

 

 

第186回目は「西部戦線異状なし」です。

f:id:kazuma_kazama:20210304033300j:image

出典amazon.co.jp


1979年のアメリカ・イギリス合作のテレビ映画です。

 


*以降ネタバレ注意です。

 


本作は1930年の同タイトルのリメイク版です。

 


オリジナル版はモノクロだったので、カラーのリメイク版を選択してしまいました。

 


とてもテレビ映画とは思えない優れたクォリティとスケールの映画です。

 


物語の舞台は第一次世界大戦中のドイツ。

 


主人公のポールとそのクラスメイトは、ギムナジウムの愛国主戦論者の教師に、まんまとそそのかされて、全員で軍に志願してしまう。

 


入隊後、厳しい訓練を経て、最前線へと送られる。

 


そこは死と飢えの蔓延する地獄の様な戦場でした。

 


果たしてポールは無事に故郷に帰還することができるのでしょうか?

 


機会があれば、是非一度観てみてください。

 


この映画は第一次世界大戦の戦争描写がリアルということで、評価が高いようです。

 


視点がドイツ軍側というのも珍しいかもしれません。

 


西部戦線では、いわゆる塹壕戦という戦いになっていて、かなりの膠着状態に陥っているようです。

 


爆撃をやり過ごし、無謀な突撃を繰り返す戦場。

 


おそらく有効な戦術はないのでしょう。

 


消耗戦です。

 


食料も乏しく、兵隊の命も消耗品のように消費されて行きます。

 


そんな中でも、ポールたちは懸命に生きていきます。

 


結構な死者や負傷者が出ますが、目を覆うような描写はありません。

 


血みどろの映像がないので、戦場の恐怖などは幾分軽減されているように感じました。

 


病院なども清潔感が漂っています。

 


現実はもっと不衛生で泥まみれの血まみれに違いありません。

 


そういう意味では観やすい映画でした。

 


しかし、戦闘シーンはなかなか迫力があります。

 


塹壕戦というのは意外と接近戦で、かなり恐ろしい戦いです。

 


火炎放射器や毒ガスなども登場して、地獄絵図と化しています。

 


ところで、ドイツ軍のヘルメットには何でツノが生えているんでしょうか?

 


せっかく塹壕に隠れても、ツノがぴょこぴょこ見えたら居場所がバレてしまいませんか?

 


戦闘シーンもさることながら、それ以外のシーンも見応えがあります。

 


戦場外のドイツの風景は美しく、戦場とのコントラストが色濃く出ています。

 


食料不足なところは痛ましいですが、平和なところでは、能天気な人々が机上の戦略に想いを馳せ、戦場の兵士との意識の乖離が見られます。

 


その辺りがポールたちの兵士とのしての苦悩や虚無感を生んでいるようです。

 


この映画では、かなり戦争の虚しさを感じました。

 


古い映画なので、観る機会はないかもしれませんが、歴史の1ページとして観てみる価値はあるように思いました。

 


もちろん、映画史に残る作品でもあると思います。

 


気が向いたら一度観てみてください。

 


さて、リメイク版を観たら、何だかオリジナル版を観たくなったので、観てしまいました。

f:id:kazuma_kazama:20210304033411j:image

出典amazon.co.jp

 


オリジナル版は同タイトルで、1930年の作品です。

 


*以降ネタバレ注意です。

 


オリジナル版もほぼストーリーは同じでした。

 


ただ、人物描写や人間関係を掘り下げているのはリメイク版の方が深みがあります。

 


反戦的なメッセージ性はオリジナル版の方が、ストレートな様な気がしました。

 


もしも、どちらかを観るならば、リメイク版をお勧めしておきます。

 


単純に、面白いし分かりやすいと思います。

 


感想としましては、やはり愛国心を煽って生徒を戦場に送り込んだ教師が悪いと思います。

 


時代とか国家の事情などがあるかもしれませんが、私は戦争を回避することこそが愛国心だと思います。

 


それにしても「西部戦線異状なし」とは皮肉なタイトルです。

 


戦場は今日も安定の地獄です。

 

 

 

人間失格 太宰治と3人の女たち

 

 

第185回目は「人間失格 太宰治と3人の女たち。

f:id:kazuma_kazama:20210303003339j:image

出典Amazon.co.jp

 


2019年の日本の伝記映画です。

 


*以降ネタバレ注意です。

 


私は学生時代には「図書室の主」と呼ばれるほど図書室に入り浸っていました。

 


それこそ、私は文学少年だと思われていたようですが。

 


実は私は文学とは無縁の人生を送って来たのでした。

 


単に私は図書室の雰囲気が好きなだけで、一冊の本も読んでいませんでした。

 


太宰治など学校の授業で「走れメロス」を習った程度です。

 


人間失格というタイトルには興味を惹かれるものがありましたが、読むには至りませんでした。

 


そう言えば、幼い頃、本棚に「斜陽」と「車輪の下」が一冊にまとまった本がありました。

 


いっさい興味はありませんでした。

 


小説が苦手というわけではありませんでしたが、面白いかどうかも分からない物に時間を費やす気になれませんでした。

 


読むとすれば、映画の原作本かノベライズ作品にかぎっていました。

 


ところが最近、妻に太宰治を勧められるようになりました。

 


いや、前々から、勧められてはいたのですが、興味はなかったのです。

 


妻が言うには私と太宰治には通づるものがあるそうです。

 


はて、

 


私は太宰治については学校で習った程度しか知りませんが、

 


私とは真逆の人間の様に感じていました。

 


私はどちらかと言うと、生に執着するタイプですが、太宰治は何度も自殺を試みているそうです。

 


私は長生きして、周りに迷惑をかけながら、ヨボヨボとなり、やがて機械の身体になって、更に長生きしようと思っています。

 


自殺なんてとんでもない。

 


しかし、太宰治が女性と心中して自分だけが助かるというところは、私は共感を覚えました。

 


私にはそんな経験はありませんが、

「2人ガードレールとクラッシュしてもなんか私だけ助かりそう」な悪運の強いイメージがあります。

 


太宰治の女癖が悪いところも、私とは真逆だと思います。

 


金づかいもあらいようですし、ますます私とは違う様な気がします。

 


小説を読めば解るのでしょうか。

 


さて、映画の方はと言いますと、タイトルは「人間失格」ですが、小説「人間失格」の映画化ではなく、太宰治の伝記となっています。

 


太宰治の最期の2、3年を映像化した物になっています。

 


「斜陽」と「人間失格」の執筆がメインです。

 


3人の女たちとは妻の美知子と斜陽のモデルで愛人の静子、さらに愛人の富栄です。

 


三人三様の女性が魅力的です。

 


何と言いますか、3人とも逞しくて良いと思います。

 


浮気は良くないとは思いますが。

 


太宰治は大概だらしのない人間として描かれています。

 


そこがまた共感をえるのかもしれません。

 


映像としては、昭和初期の雰囲気と美しい色使いで、若干ファンタジックに感じます。

 


途中で坂口安吾三島由紀夫が登場するところも面白いです。

 


最終的な感想としましては、太宰治に興味が湧きましたし、嫌いではなくなっていました。

 


もともと嫌いではありませんでしたが、ロクでもない奴だとは思っていました。

 


映画を観ると、ロクでもない奴ですが、憎めない人間であったという感じです。

 


終盤に太宰治が生に執着するシーンがありましたが、そこは共感が持てました。

 


太宰治が亡くなった後の女たちの生き方も微笑ましく感じました。

 


太宰治ファンや、太宰治に興味がある人は是非観ることをお勧めしておきます。

 


そして、私は人間失格を読み始めました。

 


さて、ついでにもう一本映画を軽く紹介しておこうと思います。

 


ビブリア古書堂の事件手帖」です。

f:id:kazuma_kazama:20210303003440j:image

出典Amazon.co.jp

 


2018年の日本のミステリー映画です。

 


*以降ネタバレ注意です。

 


ビブリア古書堂という古本屋に持ち込まれた夏目漱石全集に隠された秘密が物語の始まりです

 


後半は太宰治の「晩年」の初版本にまつわる話です。

 


全体としては夏目漱石の「それから」が主題となっています。

 


書籍に秘められた謎とメッセージを紐解いていく、一風変わった推理ものになっています。

 


ただし、残念なことに推理パートはあまり良い出来ではありません。

 


むしろ「それから」のオマージュ作品としてとらえた方が断然面白いです。

 


文学が好きな人、夏目漱石が好きな人は是非観てみてください。

 


意外と私は面白いと感じました。

 


私も少しは文学を読み進めたいと思います。

 


ところで、文豪の皆さんは伊豆が好きなんですね。

 


「伊豆ときたら、浮気を疑え」って感じです。

 

 

 

ザ・ファブル

 

 

 

第184回目は「ザ ・ファブル」です。

f:id:kazuma_kazama:20210302161753j:image

*出典amazon.co.jp

 


2019年の日本のヤクザ映画です。

 


*以降ネタバレ注意です。

 


私はこの映画を誤解していました。

 


殺しをしない殺し屋という設定であり、基本的にはアクション映画なのですが、どちらかというとコメディよりの映画なのではないかと思っていました。

 


ところが中身はヤクザものの映画でした。

 


しかも結構ハードめのヤクザものでした。

 


ひょっとしたら、ヤクザものが苦手な人は受け付けないかもしれません。

 


しかし作品としては、アクションはカッコ良いし、笑いもあり、シリアスな場面もあるバランスの取れた上質な作品になっています。

 


物語は、伝説の殺し屋「ファブル」がボスから1年間の潜伏期間を指示されるところから始まります。

 


一般人として普通の生活をするように命令されました。

 


その1年の間、殺しは禁止です。

 


もし、人を殺せばボスに抹殺されてしまいます。

 


潜伏先の大阪に向かったファブルは佐藤明として身を隠しますが。

 


潜伏先は真黒組というヤクザでした。

 


果たしてファブルは無事に潜伏期間をまっとうできるのでしょうか?

 


是非、観てみてください。

 


冒頭にファブルが暗殺者として活躍するシーンがあります。

 


ファブルの伝説の殺し屋としての実力を見せつけるシーンですが、圧倒的です。

 


次々とヤクザを倒していき、体感では割と長い時間戦っていた様な気がしましたが、たったの5分しかありませんでした。

 


ここはギュッとハートをつかまれました。

 


それから一転して、殺しを封印するという展開は上手いと思いました。

 


しかしながら、潜伏先がヤクザというのは選択として間違っているのではないでしょうか?

 


それともボスはワザと物騒なところに送り込んだのでしょうか?

 


不思議です。

 


ありがちなパターンでいけば、潜伏先は教会が経営している孤児院とかで、結局ヤクザに因縁をつけられる、というのが王道ではないでしょうか?

 


まぁ、それじゃあ普通すぎて、つまらないかも知れませんね。

 


本編は真黒組の内部抗争が大部分を占めているので、ファブルの一般人としての生活は僅かしか描かれていません。

 


そこは少し残念な気がします。

 


ヤクザものに嫌悪感を抱く人はキツいかもしれません。

 


現に私も登場人物のチンピラの所業に嫌悪感を禁じえませんでした。

 


最終的にはスッキリと回収されるので、納得しますが、それなりのヘヴィさを感じました。

 


結局のところ、良くできたヤクザもので、ヤクザの比重が高い作品になっています。

 


終盤の戦闘シーンを短くして、もっとファブルの私生活を多めにして欲しかったです。

 


全体的な人物描写も少し浅めに感じました。

 


少なくとも悪役にはそれなりの深みがないと、戦いの価値も上がらないと思います。

 


戦闘シーンが見せ所というのも判りますけど、長過ぎたように感じました。

 


冒頭の戦闘シーンは本気のファブルなら5分間で片付けられ。

 


終盤の戦闘シーンは殺しを封印されたファブルが手加減しているので、30分かかった。

 


と、とらえるべきなのでしょう。

 


そこも良く出来ていると評価するべきなのでしょう。

 


総合的な評価としては充分満足できる作品だったと思います。

 


間もなく続編も公開されるそうなので、序章としてはなかなかの出来だったと思います。

 


少なくとも続編も観てみたいという気持ちになっています。

 

 

 

TENET テネット

 

 

 

第183回目は「TENET」です。

f:id:kazuma_kazama:20210223151250j:image

出典Amazon.co.jp


2020年のアメリカのSF映画です。

 


*以降ネタバレ注意です。

 


インターステラー 」に続いて「TENET」について語りたいと思います。

 


この映画も設定が難解で、エントロピーだとか難しい言葉が次々と出て来ますが、ふんわりと雰囲気で観ても充分に楽しめます。

 


もちろん物理学とかに詳しい人の方が楽しめるのだと思いますが、全然大丈夫です。

 


私は物理学などはチンプンカンプンなので、理屈は映像的な面白さだけ感じれれば、それでOKです。

 


ストーリーは単純で面白いし、科学的なところは無視しても全然楽しめます。

 


物語はウクライナキエフにあるオペラハウスでテロが発生するところから始まります。

 


主人公はCIAのエージェントで、あるミッションのために、テロの事件現場に潜入します。

 


その後、主人公は謎の組織「TENET」に引き抜かれます。

 


そこで主人公は「逆行銃」の存在を知らされます。

 


逆行銃とは弾痕から銃へと弾が帰って来る不思議な銃です。

 


どういう原理かは解りませんが、時間が逆転する弾が発射される銃です。

 


それは未来から持ち込まれた物なのです。

 


未来人の陰謀を暴くために主人公は逆行弾の出どころを頼りに捜査を始めます。

 


果たして、主人公は未来人の陰謀を阻止することができるのでしょうか?

 


是非一度、観てみてください。

 


すみませんが、今回はネタバレ強めになっていますので、ご注意ください。

 


まず、冒頭のテロのシーンですが、導入部分としては最高だと思います。

 


緊張感を高めつつ、頭の中に疑問符が現れ好奇心も高まります。

 


次に逆行銃や未来人の説明になるのですが、正直なところ、あまり上手な説明だとは思えませんでした。

 


エントロピーを減少させると時間が過去に戻るなんて説明されて

「ハイ、そうですか」

ってなりますか?

 


物理学に詳しい人ならば、人工的にエントロピーを減少させることができれば過去に逆行できるというのは常識のようですが、普通の人にはサッパリ解らないでしょう。

 


そもそもエントロピーって何だよって話です。

 


私が子供のころ「ダンジョンズ&ドラゴンズ」というテーブルトークRPGにハマっていたのですが、その時もエントロピーが全く理解できませんでした。

 


ちょっとしたトラウマです。

 


しかし、安心してください

エントロピーに深い意味はありません。

 


「へぇ」

ぐらいのつもりで聞いて下さい。

 


理解出来ないから映画を途中で挫折するなどという必要は全くありません。

 


逆行銃も雰囲気で楽しんで下さい。

 


さて、ここからがネタバレ強です。

 


この映画の最大の見どころである逆行世界について話したいと思います。

 


できればここから先は映画を観てから読むか、多少のネタバレは平気という人が読んでください。

 


実はこの映画にはタイムマシンが出てきます。

 


そのタイムマシンは回転ドアと呼ばれる設備で、我々の住む順行世界と時間が過去に戻る逆行世界に繋がっていて双方向に行き来することができます。

 


言葉の表現が間違っていますが、順行世界と逆行世界は同じ世界です。

 


パラレルワールドでもなければ、世界線が違うわけでもありません。

 


逆行世界に入れば世界が過去に遡っているように見えるのです。

 


車や歩く人が後ろ向きに進んでいたりします。

 


ビデオを逆再生したような世界です。

 


ちょっと言葉では説明できませんが、逆行世界を通って過去に戻ることができるのです。

 


逆行世界では1秒過去に戻るのに1秒掛かるのです。

 


回転ドアを通って過去へ行ったり未来に行ったりするわけです。

 


しかし過去を変えることはできません。

 


すでに過去で起こったことは起こってしまっているのです。

 


その辺りが視覚的に面白く表現されているので、是非観て欲しいところです。

 


多分、色々と矛盾するところもあると思いますが、抜群に面白いと思います。

 


順行と逆行が同時進行するシーンなどは、脳をフル回転させても混乱します。

 


とっても刺激的な映像になっているので、見応え抜群です。

 


その他には、友情や家族の絆がテーマになっていてドラマ部分もしっかりと魅せてくれます。

 


私は「TENET」と「インターステラー 」は同じ世界なのではないかと勝手に思っています。

 


インターステラー 」では滅亡寸前の地球から脱出しようとするアメリカの姿が描かれています。

 


「TENET」では滅亡寸前の地球の時間を逆行させて過去に向かうロシアの姿が描かれています。

 


両作品ともに未来人の影響を受けるというところは同じです。

 


インターステラー 」のテーマは「起こり得ることは起こり得る」でしたが、

 


「TENET」は「起こったことは起こった」です。

 


インターステラー 」と「TENET」は表裏一体の双子のような作品だと思います。

 


何よりも時間や物理学を題材にしているところが同じです。

 


なので、私は「TENET」の未来が「インターステラー 」だと思っています。

 


その方が何だか面白くないですか?

 


最後に私の「TENET」に関する疑問を書いておきたいと思います。

 


例えば

 


回転ドアの順行側と逆行側に時計を置いておきます。

 


0:00分に観測者Aが回転ドアで順行から逆行に時計を持って行きます。

 


逆行側と順行側の時計はそれぞれ0:00のはずです。

 


1分後、

 


順行から持ってきた時計は0:01分になります。

 


逆行側にあった時計は過去に向かうので、23:59分になります。

 


さらに1分後

 


観測者Bが新たに時計を持って順行から逆行へ回転ドアを通過します。

 


Aの時計とBの時計は当然0:02分です。

 


ところが逆行にあった時計は23:58になっているはずです。

 


本来はBの時計と同じ0:02分であるはずです。

 


この調子で行くと一年後に観測者Cが順行から逆行へ回転ドアを通過すると、1年前にタイムスリップすることになってしまいます。

 


よね?

 


私は物理学には詳しくないので、見当違いなことを言ってるのかもしれませんが。

 


この考えでいくと、回転ドアのシステムは崩壊してしまいます。

 


ということは、観測してない間は逆行世界の時間は順行していて、観測すると逆行し始めるのでしょうか?

 


さて、私は何を言ってるのでしょうか?

 


自分でも理解できません。

 


そもそも映画の方もエントロピーやら逆行弾なんて回りくどい説明じゃなく。

 


タイムマシンがあるなら、タイムマシンで説明してくれればスムーズに話が進んだように思います。

 


まっ「起こってしまったことは、起こってしまった」ので仕方ありません。

 


とりあえず、細かいことは忘れて「TENET」を楽しんでみてください。