2019年の日本の伝記映画です。
*以降ネタバレ注意です。
私は学生時代には「図書室の主」と呼ばれるほど図書室に入り浸っていました。
それこそ、私は文学少年だと思われていたようですが。
実は私は文学とは無縁の人生を送って来たのでした。
単に私は図書室の雰囲気が好きなだけで、一冊の本も読んでいませんでした。
人間失格というタイトルには興味を惹かれるものがありましたが、読むには至りませんでした。
そう言えば、幼い頃、本棚に「斜陽」と「車輪の下」が一冊にまとまった本がありました。
いっさい興味はありませんでした。
小説が苦手というわけではありませんでしたが、面白いかどうかも分からない物に時間を費やす気になれませんでした。
読むとすれば、映画の原作本かノベライズ作品にかぎっていました。
ところが最近、妻に太宰治を勧められるようになりました。
いや、前々から、勧められてはいたのですが、興味はなかったのです。
妻が言うには私と太宰治には通づるものがあるそうです。
はて、
私は太宰治については学校で習った程度しか知りませんが、
私とは真逆の人間の様に感じていました。
私はどちらかと言うと、生に執着するタイプですが、太宰治は何度も自殺を試みているそうです。
私は長生きして、周りに迷惑をかけながら、ヨボヨボとなり、やがて機械の身体になって、更に長生きしようと思っています。
自殺なんてとんでもない。
しかし、太宰治が女性と心中して自分だけが助かるというところは、私は共感を覚えました。
私にはそんな経験はありませんが、
「2人ガードレールとクラッシュしてもなんか私だけ助かりそう」な悪運の強いイメージがあります。
太宰治の女癖が悪いところも、私とは真逆だと思います。
金づかいもあらいようですし、ますます私とは違う様な気がします。
小説を読めば解るのでしょうか。
さて、映画の方はと言いますと、タイトルは「人間失格」ですが、小説「人間失格」の映画化ではなく、太宰治の伝記となっています。
太宰治の最期の2、3年を映像化した物になっています。
「斜陽」と「人間失格」の執筆がメインです。
3人の女たちとは妻の美知子と斜陽のモデルで愛人の静子、さらに愛人の富栄です。
三人三様の女性が魅力的です。
何と言いますか、3人とも逞しくて良いと思います。
浮気は良くないとは思いますが。
太宰治は大概だらしのない人間として描かれています。
そこがまた共感をえるのかもしれません。
映像としては、昭和初期の雰囲気と美しい色使いで、若干ファンタジックに感じます。
最終的な感想としましては、太宰治に興味が湧きましたし、嫌いではなくなっていました。
もともと嫌いではありませんでしたが、ロクでもない奴だとは思っていました。
映画を観ると、ロクでもない奴ですが、憎めない人間であったという感じです。
終盤に太宰治が生に執着するシーンがありましたが、そこは共感が持てました。
太宰治が亡くなった後の女たちの生き方も微笑ましく感じました。
太宰治ファンや、太宰治に興味がある人は是非観ることをお勧めしておきます。
そして、私は人間失格を読み始めました。
さて、ついでにもう一本映画を軽く紹介しておこうと思います。
「ビブリア古書堂の事件手帖」です。
2018年の日本のミステリー映画です。
*以降ネタバレ注意です。
ビブリア古書堂という古本屋に持ち込まれた夏目漱石全集に隠された秘密が物語の始まりです
後半は太宰治の「晩年」の初版本にまつわる話です。
全体としては夏目漱石の「それから」が主題となっています。
書籍に秘められた謎とメッセージを紐解いていく、一風変わった推理ものになっています。
ただし、残念なことに推理パートはあまり良い出来ではありません。
むしろ「それから」のオマージュ作品としてとらえた方が断然面白いです。
文学が好きな人、夏目漱石が好きな人は是非観てみてください。
意外と私は面白いと感じました。
私も少しは文学を読み進めたいと思います。
ところで、文豪の皆さんは伊豆が好きなんですね。
「伊豆ときたら、浮気を疑え」って感じです。