第186回目は「西部戦線異状なし」です。
1979年のアメリカ・イギリス合作のテレビ映画です。
*以降ネタバレ注意です。
本作は1930年の同タイトルのリメイク版です。
オリジナル版はモノクロだったので、カラーのリメイク版を選択してしまいました。
とてもテレビ映画とは思えない優れたクォリティとスケールの映画です。
物語の舞台は第一次世界大戦中のドイツ。
主人公のポールとそのクラスメイトは、ギムナジウムの愛国主戦論者の教師に、まんまとそそのかされて、全員で軍に志願してしまう。
入隊後、厳しい訓練を経て、最前線へと送られる。
そこは死と飢えの蔓延する地獄の様な戦場でした。
果たしてポールは無事に故郷に帰還することができるのでしょうか?
機会があれば、是非一度観てみてください。
この映画は第一次世界大戦の戦争描写がリアルということで、評価が高いようです。
視点がドイツ軍側というのも珍しいかもしれません。
西部戦線では、いわゆる塹壕戦という戦いになっていて、かなりの膠着状態に陥っているようです。
爆撃をやり過ごし、無謀な突撃を繰り返す戦場。
おそらく有効な戦術はないのでしょう。
消耗戦です。
食料も乏しく、兵隊の命も消耗品のように消費されて行きます。
そんな中でも、ポールたちは懸命に生きていきます。
結構な死者や負傷者が出ますが、目を覆うような描写はありません。
血みどろの映像がないので、戦場の恐怖などは幾分軽減されているように感じました。
病院なども清潔感が漂っています。
現実はもっと不衛生で泥まみれの血まみれに違いありません。
そういう意味では観やすい映画でした。
しかし、戦闘シーンはなかなか迫力があります。
塹壕戦というのは意外と接近戦で、かなり恐ろしい戦いです。
火炎放射器や毒ガスなども登場して、地獄絵図と化しています。
ところで、ドイツ軍のヘルメットには何でツノが生えているんでしょうか?
せっかく塹壕に隠れても、ツノがぴょこぴょこ見えたら居場所がバレてしまいませんか?
戦闘シーンもさることながら、それ以外のシーンも見応えがあります。
戦場外のドイツの風景は美しく、戦場とのコントラストが色濃く出ています。
食料不足なところは痛ましいですが、平和なところでは、能天気な人々が机上の戦略に想いを馳せ、戦場の兵士との意識の乖離が見られます。
その辺りがポールたちの兵士とのしての苦悩や虚無感を生んでいるようです。
この映画では、かなり戦争の虚しさを感じました。
古い映画なので、観る機会はないかもしれませんが、歴史の1ページとして観てみる価値はあるように思いました。
もちろん、映画史に残る作品でもあると思います。
気が向いたら一度観てみてください。
さて、リメイク版を観たら、何だかオリジナル版を観たくなったので、観てしまいました。
オリジナル版は同タイトルで、1930年の作品です。
*以降ネタバレ注意です。
オリジナル版もほぼストーリーは同じでした。
ただ、人物描写や人間関係を掘り下げているのはリメイク版の方が深みがあります。
反戦的なメッセージ性はオリジナル版の方が、ストレートな様な気がしました。
もしも、どちらかを観るならば、リメイク版をお勧めしておきます。
単純に、面白いし分かりやすいと思います。
感想としましては、やはり愛国心を煽って生徒を戦場に送り込んだ教師が悪いと思います。
時代とか国家の事情などがあるかもしれませんが、私は戦争を回避することこそが愛国心だと思います。
それにしても「西部戦線異状なし」とは皮肉なタイトルです。
戦場は今日も安定の地獄です。