第311回目は「PLUTO」です。
2023年の日本のSFアニメです。
私は漫画好きではあるものの、手塚治虫作品には、ほぼほぼ手を出していません。
手塚治虫はどちらかと言うと、アニメ制作者としての方が印象が強かったです。
原作は読んだことがなく、アニメでしか知らないというところです。
この「PLUTO」は「鉄腕アトム」の「地上最大のロボット」のエピソードを原作としています。
原作はわりとあっさりとした話ですが、今作は脇役まで深く深く掘り下げた内容になっています。
なんたって主人公が原作ではただのヤラレ役のロボット刑事ゲジヒトなんです。
その他のチョイ役も深く掘り下げられ、感情移入できる作品となっています。
アレンジした漫画家、浦沢直樹は流石だと思います。
物語の舞台は近未来、ロボットに人権が与えられ人間とロボットが共存する世界。
山岳案内ロボット「モンブラン」が、殺害される事件が発生しました。
捜査を担当するのはユーロポールの刑事ロボット「ゲジヒト」です。
一方、ドイツのデュッセルドルフでもベルナルド・ランケという人間が殺害されました。
ゲジヒトは二つの事件の接点を見つけ出し、連続殺人事件として捜査を開始しました。
モンブランとランケには4年前の第39次中東戦争に関わっていた過去がありました。
やがて、関係した人間、ロボットが次々と襲われていきます。
その中に少年ロボット「アトム」がいました。
ゲジヒトは事件を解明できるでしょうか?
犯人は?黒幕は?
PLUTOとは?ボラーとは?
是非、観てみてください。
全8話です。
正直なところ1話目は、かなりキツイです。
前半は良いのですが、後半がかなり退屈で挫折しそうになりました。
しかし、そこで挫けてはなりません。
1話目のラストからメチャクチャ面白くなります。
素晴らしい作品であると断言しておきます。
そもそもアトムが登場するのが1話目のラストからなのです。
それまで、馴染みのないゲジヒトやノース2号のエピソードが続き、少しとっつきが悪い感は否めません。
そこはグッとこらえて観てみてください。
もしも2回観ることがあったら、ノース2号のエピソードも充分楽しめると思います。
テーマはかなり複雑で深いものになっています。
限りなく人間に近づいたロボットは、もはや人間なのではないか、というようなことも考えさせられます。
怒りや悲しみをプログラムされたロボットの感情は本物なのでしょうか?
いや、本物か偽物かは関係ないような気がします。
ロボットもプログラムされた以上は怒り悲しむということです。
そこにこのアニメの感動が隠されています。
物語は殺人事件を追うサスペンス風に描かれていますが、SF作品として充分な見応えがあります。
作中の第39次中東戦争ではペルシア王国が、大量破壊ロボットを密かに開発しているという疑惑が発端で始まっています。
謎の人物ゴジ博士の正体を追っていくストーリー展開は鬼気迫るものを感じます。
原作の浦沢直樹の作風が充分に活かされた作品となっているので、ファンの皆様は必見です。
一方、手塚治虫キャラの活躍も見逃せません。
お茶の水博士、ヒゲオヤジ、天馬博士、アトム、ウラン、ブラックジャック(声のみ)など、お馴染みのキャラが登場します。
このキャラクターのからみ方も秀逸だと思いました。
この辺りも浦沢直樹の手腕を恐ろしいほどに感じました。
私は手塚治虫作品に馴染みがないので、何とも言えませんが、手塚治虫ファンの方も納得する作品なのではないでしょうか?
手塚治虫の同エピソードでも、短いながら破壊のためだけに作られたロボットの悲哀が描かれていました。
そこには友情や愛情も含まれています。
そこを深く掘り下げ過ぎて、こんな作品になってしまったのです。
いや、本当に素晴らしい作品です。
現実世界でも人工知能がいつか感情を持つかもしれません。
その時、人類はロボットに愛されるのでしょうか?
それとも憎まれるのでしょうか?
是非、この作品を観てそんなことに思いを馳せてみてはいかがでしょう。
あ、
因みに、虫が苦手な人はショッキング映像があるので注意が必要です。
是非?観てみてください。