第110回目はブレードランナーです。
*以降ネタバレ注意です。
舞台は近未来のロサンゼルスですが、設定では2019年となっています。
原作は1968年のフィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」です。
その頃の50年後は車が空を飛び、
人類は宇宙に進出して、
アンドロイドが闊歩する未来が想像されていたのでしょう。
実際には全然科学技術が追いついていませんね。
ストーリーはレプリカント(アンドロイドのこと)が逃亡したので抹殺するため主人公リック・デッカードが捜査にあたるというものです。
ストーリーの比重は軽くて、設定に重きを置いているという感じがします。
レプリカントは宇宙などで活躍する人造人間なのですが、体力は人間以上で知能も制作した科学者と同等に持っているということです。
さらにレプリカントはしばらくすると自我に目覚めるため、その寿命は4年と定められていました。
逃亡しロサンゼルスに潜伏したレプリカントは、製作者に寿命を引き延ばすように頼みにやってきました。
しかし、ロサンゼルス市警はそれを許しません。
ストーリーは単純なのですがテーマは深く重いものになっていると思います。
「アンドロイドに人権はあるか?」
ということだと思います。
レプリカントは強制労働のために作られ、不要になったら始末される。
ただの道具ならそれもあり得るかもしれませんが、人格を持ったレプリカントを勝手に処分して良いのでしょうか。
最低限、裁判は受けさせてあげて欲しい気がします。
この映画を観ると複雑な気持ちになります。
デッカードを応援して良いものかどうか。
レプリカントは犯罪を犯してしまっているので逮捕するのはやむを得ないのですが、レプリカントに同情してしまいます。
この映画の見どころとしてはデッカードの機械的な捜査と、レプリカントの人間的な心情だと思います。
命の大切さを人工生命体の方が知っているという感じです。
単純な刑事ものやアクションものでないところが魅力的です。
どこから来てどこへ行くのか?というような深いテーマになっています。
逃亡したレプリカントのほかにレイチェルという女性が出てきますが、デッカードとの交流で人造人間の愛についても語られます。
私は人工知能に興味があり、その手の映画はわりと観る方です。
果たして人造人間には人権を与えるべきなのでしょうか?
近い将来に現実でそんな議論がなされる時代がくるのではないでしょうか。
興味のある方は是非観てみて下さい。
映像的にも見応えがありました。
未来のロサンゼルスなんですが、街並みは現代では考えられないような巨大なビルと、その足元に香港を彷彿させるスラムがあります。
日本的な広告や看板があり、アジアが未来では進出しているという想像がなされていたというのが面白いです。
ほとんどが雨のシーンで退廃的なイメージを発しています。
ヴィジュアル面でも楽しませてくれる良い映画だと思いました。
ブレードランナーにはディレクターズカット版やファイナルカット版など4種類あるそうなのですが、今回はファイナルカット版を視聴しました。
どれが一番良いとはいちがいに言えないようですが、デッカードの印象が微妙に違って見えるそうです。
次に観る機会があれば違うバージョンで観てみたいと思います。