第208回目は「パーフェクト・ワールド」です。
1993年のアメリカのヒューマンドラマ映画です。
*以降ネタバレ注意です。
前回の「逃亡者」に続いて、逃走ものを鑑賞しました。
「逃亡者」とは全く印象の違う映画です。
因みにこの映画は妻と映画館で観た2本目の映画でした。
別に逃亡ものが好きだった訳ではありません。
ケヴィン・コスナー主演で、監督がクリント・イーストウッドだったので、良さそうに思えたのでした。
因みに、この映画で私は俳優や監督で、観る映画をチョイスすることをやめました。
いや、決して監督や俳優が悪かったわけではありません。
むしろ素晴らし過ぎたと言い切れます。
この映画を鑑賞した私は虚しさのドン底に突き落とされてしまったのです。
私はあまり哀しい映画は好みではなかったのです。
ある意味、感動したと言えなくもないです。
作品としてはパーフェクトだったのではないでしょうか?
このブログでは、私が観て面白かった作品を厳選して、オススメしようという主旨で書いていますが。
今回は正直なところ、オススメかどうか自信がありません。
ただ、この虚しさを、体感してみて欲しい気がします。
物語は1963年、ブッチとテリーは刑務所を脱獄します。
逃亡中、押し入った民家で8歳の少年フィリップを人質にします。
一方、警察署長のガーネットはブッチ達を追跡する任務につきます。
果たしてブッチとテリーは逃亡に成功するでしょうか?
フィリップの運命は?
興味がありましたら、観てみてください。
この映画のテーマは父親です。
と言っても、父親は出てきません。
フィリップには父親がいませんでした。
ブッチに誘拐されたフィリップは、ブッチに父性を求めてしまいます。
いわゆるストックホルム症候群というやつでしょうか。
妙な信頼関係を築いてしまいます。
一方、ブッチの父親はロクでもない男のようで、おそらく子供に暴力を振るう様な奴に違いありません。
ところが、ブッチは父親がよこした葉書を頼りに、父親のもとへ向かおうとしています。
そこがブッチにとってのパーフェクト・ワールドのようです。
果たして、そうなのでしょうか?
ロクでもない父親のいる世界はロクでもない世界なのではないでしょうか?
本当のところは判りませんが、私にはそうとしか思えません。
パーフェクト・ワールドなんて、ありはしないんだよっと思ってしまいます。
そう思うとブッチに同情しないでもないです。
しかし、ブッチが善人かと言われると、実はそうでもないので困ってしまいます。
ブッチはやっぱり悪人です。
おそらく父親の影響だと思いますが、普通に悪人です。
家庭環境のせいかもしれませんが、ブッチの犯罪を許すわけにはいきません。
家庭環境が悪くても善人がいるわけですから、ブッチには悪人の素質があったのだと思います。
ブッチは大人が子供に暴力を振るうことを、極端に嫌っています。
そこから犯罪に発展してしまう場合もあります。
フィリップにも悪影響を及ぼします。
となると、この映画では警察署長のガーネットを応援するしかありません。
しかし、考えようによっては、そもそもガーネットの判断ミスから始まった事かもしれません。
誰に感情移入して良いのか分かりません。
そうこうしているうちに、ブッチに引き込まれてしまいます。
「これがストックホルム症候群ってやつか」
全く救いようのない話です。
せめてフィリップが、まっとうな大人になることを祈るばかりです。
そんなこんなで、虚しさ抜群の映画でした。
ある意味リアリティがあるように感じました。
こんな映画を撮った監督(兼ガーネット役)のクリント・イーストウッドは凄いと思います。
何だか深い映画なので、観てみてください。