第107回目はマイノリティ・リポートです。
舞台は2054年の近未来のアメリカです。
その時代ではプリコグと呼ばれる超能力者が犯罪を予知して、未然に防ぐという捜査法が試行されていた。
主人公は犯罪予防局の捜査官ジョン・アンダートン。
ジョンは6年前に息子を誘拐されて以来、仕事にのめり込んで、夫婦間も疎遠になっているほどだった。
そんな最中、司法省調査員ダニー・ウィットワーが犯罪予防システムの完全性を視察にやってきた。
犯罪予防率は100%で、システムに問題がなければ全国で導入される事になる。
果たしてシステムに欠陥はあるのだろうか。
そしてプリコグが次に予知した事件の犯人は意外な人物だった。
システムを肯定するジョンとシステムに懐疑的なダニーの対決や如何に、という物語です。
ストーリーは面白いです。
ですが、そもそもの設定に無理があるような気がします。
先ずプリコグの存在ですが、設定自体は面白いです。
薬物中毒の子供が副作用で、予知能力を身につける。
それを犯罪防止に利用するのはいいでしょう。
しかし、プリコグは3人しかいなくて、3人で1つの事件を予知します。
かなりの負担です。
プリコグは見る限りシステムに軟禁状態です。
まるで機械のように扱われています。
果たしてプリコグに人権はあるのでしょうか?
給料は出るのでしょうか?
テスト地域をプリコグ3人が予知しているようですが全国区になるとどうなるのでしょうか?
プリコグは3人だけしかいないようです。
となると、プリコグを増産しなければならないでしょう。
プリコグの作り方は簡単、子供を薬物中毒にして、治療して予知能力を発現させる。
ただし、能力の発現は偶発的で確実ではないのです。
全国展開は難しいと言えるでしょう。
それ以前に人道的な意味で肯定されるはずがありません。
しかも予知能力のような得体の知れない物に依存したシステムですから怪しい物です。
さらに殺人事件を予知して、未然に防ぐのですが、犯人はいったい何の罪で逮捕されるのでしょう。
殺人未遂でしょうか。
映画の中で犯人はろくに裁判もせずに、冷凍睡眠の様な感じでカプセルに閉じ込められてしまいます。
それも6年間で1108件も未遂犯が監禁拘束されています。
恐ろしい未来です。
そんなシステムに欠陥はないのでしょうか?
是非、観てみて下さい。
映画の世界は今から30年後、公開当時からは50年後の世界です。
なんというか、丁度いい未来感です。
車が上下に移動するのはまだまだ先になりそうですが、街中のいたるところにカメラが設置してあり瞳の虹彩認証によって人物を特定できるようになっています。
良いかどうかは別として、優れた管理社会です。
ショッピングセンターも未来感があって、瞳で個人を特定してAIがセールスをしてきます。
便利なようですが、私は居心地が悪そうな気がします。
「トータル・リコール」に出てくる好みの夢を見させる施設もでて来ます。
原作者が同じフィリップ・k・ディックなので、なんだか面白いです。
そのほかでは、お巡りさんが空を飛んでいたり、小型のロボットで捜査したりしています。
その辺りも丁度良い未来感のような気がします。
私が1番気にいったのは、傘が現代と同じで何の進歩もしていないことです。
傘はもうこれ以上便利にならないのでしょうか?
資本主義国では広告関係が発展するというのがリアリティがあると思います。
スラム街があって、薬物が氾濫しているところも未来的です。
その一方でディストピアのような管理社会を導入しようとするところが、魅力的な作品に仕上げていると感じます。
近未来ものが好きな人には外せない作品です。
色調もこだわっていて、青みがかったような色合いになっています。
そこが近未来でありながら、寂れた世界観を演出しているように感じました。
この映画で最も印象に残るシーンはネタバレしない程度に言うと、転がる目玉とカビたサンドイッチです。
どちらもハラハラドキドキのシーンです。
どんなシーンかは是非観て確認してみてください。
ところでマイノリティ(少数派)という言葉は、この映画で初めて知りました。
因みに反対語のマジョリティ(多数派)という言葉は、アイドルグループ欅坂46の「サイレント・マジョリティ」という歌で初めて知りました。