第118回目は「天気の子」です。
*出典amazon.co.jp
2019年の日本のアニメ映画です。
*以降ネタバレ注意です。
主人公は家出少年の森嶋穂高。
穂高はフェリーで東京にやってきたが、東京は異常気象でずっと雨が続いていた。
そんな土砂降りの雨の東京で「100%の晴れ女」天野陽菜と出会う。
陽菜は祈るだけで天気を晴れに変えることができる特殊能力を持っていた。
しかし、その能力には代償があった。
という物語です。
日本のアニメの王道的な作品です。
何をもって王道とするかは個人差があると思いますが、私の場合は少年がなんらかの経験を経て大人へと変わる物語だと思っています。
天気の子は正にその瞬間を描いた作品です。
世の中の表裏を描いていて、なかなか良くできた作品だと感じました。
例えば美しい背景がリアルに描かれていますが、逆にそれは幻想的であり、薄汚い東京の風景でもあります。
そんな中で、少年たちは犯罪に手を染めたり、人の為に何かをしたりして生きています。
その現実的な生活と神秘的な天気を絡ませたストーリーも面白いと思いました。
どうにもならないことも、どうにか出来るかもしれないというメッセージなのでしょうか。
少年たちの無鉄砲で無謀な判断が、ある意味感動的なのかもしれません。
愛するもののためなら犯罪もいとわないし、世界が滅んでもかまわないという考えを肯定する映画です。
私はこういう思考の作品の方が好感を持てます。
妙な自己犠牲よりはよっぽど共感できます。
人間は誰かの犠牲によって成り立っていると言えますが、誰かの犠牲にならない為に精一杯戦って生きなければならないのだと思います。
若い人が観ればみんな感動するのではないでしょうか。
大人が観るとやはり主人公が子供過ぎて、客観的になりすぎるかもしれません。
心が老いてしまわないうちに是非とも観ておいて下さい。
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大人になってくると
家出しちゃダメだよ、とか
児童相談所に行こうよ、とか
線路に入っちゃダメだよ、とか
いろいろ考えてしまいます。
でも、少年にはそれよりも大事なことがあるということです。
それこそ天気すらも変えることができるのかもしれません。
年齢によって感じ方は違うかもしれませんが、良い作品だと思います。
ところで、この映画には新海誠監督の前作「君の名は」の登場人物が隠れキャラのように登場しています。
ついでにタイアップであるソフトバンクのお父さん犬も登場しているので探してみてください。
明確にされてはいませんが、「君の名は。」と同じ世界であり、その後を描いていると考えて良いのでしょうか。
「君の名は。」との共通点として神様のいる世界であるということが言えます。
作品の特殊能力が神様由来というところが、少しズルいような気がしています。
特殊能力ものの作品の見どころの1つは、どうやってその能力を身につけたかというところにあると思うのです。
にもかかわらず、神様がくれた能力となるとあまり深みがないように感じます。
しかも2作連続で神様由来じゃないですか。
それに根本の雨が降り続ける理由も解明されません。
おそらく神様の気分ということなのだと思いますが、なんとなく設定が神頼みだという感じがしてなりません。
例えば「君の名は。」の〇〇の影響で異常気象になり、雨が降るようになりましたとかなら説得力があると思うのですが、どうでしょう。
やはり神様だから良いのでしょうか。
そんなマニアックな設定は必要なくて、恋愛や人生観を描くことに重点を置いた方が良いのでしょうか。
そうなのかもしれませんね。
特に登場人物の少年たちにとっては理由なんてどうでも良いことなのかもしれません。
大人になればなるほど理由が必要になってくるものなのですね。
私も無謀で無鉄砲な時代があったような気がします。
今はそんなふうになれませんが、そういう自分が懐かしかったりします。
今は遥か遠く、映画の中の世界です。
天気の子も雨の降る世界で立派な大人になって行くのでしょう。
今後も、この世界の続編が作られるなら、是非観てみたいと思いました。