実は私は最初からガンダムを知っていたわけではありません。
初めて観たのはすでに19話目でした。
しかもガンダムとは知らずに観ていたのです。
友人宅で遊んでいる時、何気なくテレビに目を向けました。
アムロが砂漠を彷徨っているシーンで、なんのアニメかサッパリ解りませんでした。
そのあとテレビは気にせずに友人と遊んでいたのですが、テレビが騒がしくなって来ました。
再びテレビに目をやるとガンダムとグフが対決していました。
もちろん私はガンダムなど知りませんでしたが、画面に釘付けになりました。
グフがガンダムのシールドを真っ二つに切り裂きます。
しかしシールドの後ろにガンダムはいない。
ガンダムはすでに上方へジャンプしていた。
その瞬間、私の心臓はキューッと締め付けられ、立ちくらみがするほどになりました。
ガンダムとグフの対決を棒立ちで見届けた私は、
「帰る」
と言って、逃げるように走って帰りました。
おそらく友人は私に何が起こったかわからなかったでしょう。
家に帰った私は畳に倒れ込み、ガンダムとグフの対決を脳内リピートしました。
何度も何度も。
あまりのカッコ良さに鼓動が高まり、心臓が破裂しそうになっていたのです。
よく昔のラブコメなどでイケメンを見て女性が失神するシーンがありますが、それに近いものがあります。
宇宙戦艦ヤマトでもこんな気持ちになったことがない。
それから私はガンダムにハマったというわけです。
仲間内では遅い方で、しかも再放送でした。
しかし友人や妻、トニーたけざきも初めて観たのは19話目からだったというので何だか不思議でした。
それから大人になり、私が結婚して数年経った頃です。
同じくガンダム好きの友人が
「結婚相手に求める条件はなに?」
と聞いてきたので
「ガンダムが好きかどうか」
と私は答えました。
半分はネタですが、真意は同じ趣味を共有できるかどうかということです。
できればガンダムに理解がある方が良いでしょう。
友人は私が冗談を言っていると思い笑っていました。
しかし、数年後事件が起こりました。
友人も結婚してしばらくして、電話がかかって来ました。
やっと私が言っていた意味が解ったというのです。
友人はガンプラが趣味なのですが。
「またガンダムばっかり同じの買って来てる!」
と怒られたそうだ。
「いや、ガンダムはこれで、こっちはMK2でコレはνガンダムで別物だ」
と言ったそうだが、奥様には同じに見えるようだ。
結局、友人はνガンダムを残してガンダム系のガンプラを処分したそうだ。
しかし、顔つきの違うZガンダムは密かに生き残ったらしい。
私もガンダムコミックを集めているが、処分することになったら悲しいな。
理解のある妻で幸いです。
というわけで、私は時々ガンダムトークを妻にするのだが、妻はシャアが勝ったということを未だに認めてくれていない。
しかし、アムロはシャアに「逃げられた」と思っています。
「逃げ切ってやったぜイェイ!」
とはシャアは言わないですが、逃げるが勝ち、三十六計逃げるにしかずという言葉もあります。
なにより、アムロ自身が精神的な敗北を認めているのです。
「これは事実なんだ!認めなくちゃいけないんだ!」
しかし、妻は納得がいかないようです。
ひょっとしたら私以外誰も認めていないのかもしれません。
うーむ。
それでも妻とガンダムの話がができるのは嬉しいことです。
共通の趣味やお互いの好きなものを理解し合うことは大切なことです。
これがニュータイプの革新に繋がるのです。
つづく