以前、私は工場で働いていた。
工場長という立場で工場を仕切っていました。
工場にはなかなか個性的なメンバーが揃っていました。
そしてふと思ったのですが、工場のメンバーがホワイトベースのクルーに似ていると気づいたのです。
1番若く、スタンドプレーが目立ち、それでいて技術もあり才能もある工場のエースであるS君はアムロ。
文句が多く少し捻くれもののT君はカイ。
チョットS君にライバル心を持っているM君はハヤト。
目立ちはしないが、万能選手のY君はジョブ・ジョン。
そんなふうに勝手にホワイトベース隊を指揮して楽しんでいました。
ある時、飲み会の席で密かに私がそんなふうに思っていることを披露しました。
「じゃあ工場長はなんなんですか?」
S君が私に聞いて来た。
「私は……シャア!」
一同
「シバクぞ!」
「嘘です。ブライトです」
というと、それなりに納得してくれたようでした。
そんなある時。
仕事で私はS君に5番の仕事を頼んでおいた。
そして私の予想通りに5番の商品の注文が入って来た。
5番ならS君が既に仕上げているはず。
ところがどっこい。
S君は私の指示を無視して4番の仕上げをしていたのだ。
社長は激怒し、特に指示を無視した事にご立腹だった。
当のS君は5番の商品より、4番の商品の方が需要があるので、自己判断で行動した。
と謝るでもなく、自分の正当性を主張していた。
とりあえず社長からS君の身柄を引き取り、ブリッジ(工場長の机)に連れていった。
工場長として説教しなければならない。
S君は自分は悪くないと言い続けていた。
そこで私は
「ガンダムでアムロが命令を無視してガンタンクで出撃した話を覚えていますか」
「……?ハイ……」
S君は気のない返事を返した。
「そのあとグフが来ましたよね。言いたいことが解りますか?」
「その説明は良く判ります」
S君はそこでハッとなった。
「作業員は会社全体を見渡せるわけじゃないんだ!命令は絶対守れ!ガンダム(工場のメインの機械のこと)から降ろすぞ!」
私はブライトの真似をしながら、S君を叱った。
「すみません。ガンダムから降ろさないで下さい。僕が1番ガンダムを上手く使えるんです」
そう言ってS君は初めて謝った。
ふざけているようだが、一応大真面目に仕事はしています。
仕事終わりに、プライドの人一倍高いS君をフォローしようと声をかけました。
S君は他の誰にも真似できない才能を持っている、この会社のエースであることを伝え、つまらないことで自分の評価を下げないように頑張って欲しいというようなことを言った。
「この会社の商品を私は世界一だと思っている。だからS君は世界で2番目のマイスターですよ」と私はS君を褒めた。
「……じゃあ1番は誰なんですか?」
すかさずS君が聞いてきた。
ヒューっと口笛を鳴らして、私は自分を指差した。
これは昔の特撮「快傑ズバット」の真似なんだけど若いS君には伝わらなかっただろう。
「チクショー!聞くんじゃなかった!」
S君は悔しそうにしていたが、いつものS君に戻っていた。
それからしばらくして、新入社員が面接に来ることになった。
チャラくてイケメンの肉体派で女好きときたので、私は即座に採用を決定した。
そして彼は私にスレッガーと呼ばれることになりました。
めぐりあい宇宙編に つづく