第75回目は累です。
*以降ネタバレ注意です。
2018年の邦画です。
予告などのヴィジュアルから、私はホラー映画だと思っていました。
累(かさね)というタイトルの文字にも、おどろおどろしい不気味さを感じていました。
しかし、あとで累が主人公の名前だと知りました。
世の中の累さん、ごめんなさい。
さて、ストーリーはというと。
演技の才能はあるが、口裂け女のような醜い切り傷のある少女、淵累(ふちかさね)と、演技の才能はないが、美少女の丹沢ニナ。
累は塗ってからキスをすると相手と顔が入れ替わるという魔法の口紅を持っていた。
2人は顔を入れ替えて、舞台のオーディションを受ける。
次第に累(顔はニナ)は脚光を浴び、一躍スターダムに踊り出す。
一方、ニナは顔だけでなく、人生そのものを累に奪われることに気づき始める。
という物語。
正直なところ、名作や、感動作などに分類されるような作品ではないと思いますが、結構面白いです。
W主人公、累を芳根京子、ニナを土屋太鳳が
演じています。
演技の下手なニナと演技の上手なニナ(累)を演じ分けているのですから、土屋太鳳の演技力は凄いと思います。
逆も然りで、芳根京子も性格の違う累とニナを演じきっています。
2人の演技の相乗効果で、画面上では土屋太鳳なんだけど、中身は累、今はニナと判るんです。
演技にはまり込むとかなり楽しめると思います。
ストーリーは未完であり、少々消化不良を起こしそうですが、もし続編があるというならば、観たいと思えます。
この物語の結末が気になります。
後半、不自然な展開がありますが、あまり気にしないことにしています。
女優の美貌に対する劣等感、嫉妬、羨望などの感情が見事に描かれていると思います。
演者が絶叫するシーンも多いですが、決して
ホラーではありません。
女性の叫び声が苦手な人は辛いかもしれません。
舞台演劇女優の映画として充分面白いです。
唯一の不満といえば横山裕。
横山裕の演技は良いのです。
ただ横山裕のキスが汚い。
少し嫌悪感を持ちました。
しかし、嫌悪感を持たせるほどの見事な演技だったとも言えます。
キスで顔を入れ替える口紅というアイデアは面白いと思います。
そこに女優という職業を絡めた、よく出来た設定です。
そんな口紅があるなら、私もイケメンと顔を入れ替えてみたいものです。
しかし、そのためには男同士でキスをしなければならないという、なかなかハードルの高い代償を払わなければならないのか。
逆に言えばブサメンがキスを迫ってくるということだ……。
……前言撤回、この映画はホラーでした。