第76回目はミストです。
*以降ネタバレ注意です。
2007年のスティーブン・キング原作のアメリカ映画です。
ホラーというよりはSFパニック映画という感じです。
ストーリーはオーソドックスで古典的ですが、なかなか見所があります。
ある日、町が霧に覆われ、主人公のデヴィッド・ドレイトンと息子のビリーその他大勢がスーパーマーケットの取り残されます。
しかも、霧の中には謎の生物がいて人間を襲います。
さて、彼らの運命やいかに。
という物語です。
パニック映画での私の楽しみ方は「生きるための選択肢」を一緒に考えることです。
例えば、冒頭にある女性が子供が心配なのでスーパーマーケットから出て行くと言います。
誰か一緒に来て欲しいと言われますが誰も行こうとはしません。
霧の中には人間を襲う怪物がいるし、霧そのものの毒性も判明していません。
明らかに危険で自殺行為としか言いようがありません。
主人公も私も行くのには反対です。
その後もしびれを切らした人たちが出て行きますが、おそらく死んでしまったでしょう。
軽率な行動は控えるのがホラーの鉄則です。
しかし、途中で怪物の襲撃を受けて、火傷を負った負傷者が出てしまいます。
主人公は近くの薬局に薬を取りに行くことにします。
私は反対です。
残念ながら、負傷者は見殺しにするべきです。
一人の命を救うために多数の人が犠牲になることはないと思います。
しかし、主人公たちは行ってしまいます。
この辺りから私は主人公に不信感を覚え始めました。
人の命を大事にする良い人に見えるが、実は自分勝手な奴じゃないだろうか。
主人公と私には考え方にズレがあった。
最も重要な「生きるための選択肢」は霧が晴れるまで、スーパーマーケットで籠城だと思います。
少なくとも食料が尽きるまでは頑張りましょう。
ドッグフードも山積みするほど大量にあるようなので、かなりの期間がしのげそうです。
しかし、それでは映画になりませんね。
精神的に追い詰められ、スーパーマーケットでは宗教家の女性の世紀末論に感化されるようになり、怪しい雰囲気なっていきます。
そこで、主人公と息子と他3人は宗教家たちと別行動するべくスーパーマーケットを出て行きます。
もちろん、私は残留派。
残留派がその後どうなったかは描かれていないので、彼ら(私を含む)の「生きるための選択肢」が正しかったのかどうかは判りません。
あとは主人公がどうなるのか祈るのみです。
この時点で私の映画に対する緊張感はだいぶ薄れました。
主人公と私は気持ちの上で別行動なので、感情移入せず、より客観的な観方になっていたと思います。
「こんな主人公はどうせロクな結末にならないよ」などと思い、勝手にバッドエンド確定と決めつけていました。
主人公がその後どういう選択をして、どういう結末を迎えるのか、是非観てみて下さい。
主人公と共感できる人は絶対に面白いと思います。
公開当時は、原作にないエンディングが付け加えられ、原作者のスティーブン・キングが大絶賛しているというのが話題になっていました。
私もこのエンディングは良かったと思います。
原作は読んだことがありませんが、聞いた話だと、私は映画の方がハッキリしていて良いと思います。
ラストで一番正しい「生きるための選択肢」が明らかになります。
どうやら私は一番正しい選択を逃してしまったようです。
残念。