第224回目は「トータル・リコール」です。
*以降ネタバレ注意です。
「仮想の記憶を実体験として記憶させる」
そんな商売を考えた人を、私は凄く頭が良いと思います。
もちろん、それは小説の話で、原作者はフィリップ・K・ディックです。
発想力が凄いので、尊敬してしまいます。
行ってもいない旅行の記憶を、まるで実際に行ったように記憶させるなんて、面白そうじゃないですか。
私のように、なかなか旅行に行けない人にはもってこいのサービスだと思います。
催眠術の延長と考えれば近未来には実現しそう気もします。
しかし、そうなれば観光業界は大打撃を受けてしまいますね。
さらに、そういう世界では記憶の改ざんなんてものが横行して、ロクな社会にはならないのかもしれません。
そんなロクでもない社会の映画です。
物語は火星に人類が進出している近未来。
地球に住む建設労働者のダグラス・クエイドは行ったこともない火星の夢を頻繁に見ていました。
いつしかクエイドは火星に移住したいと考えていましたが、妻のローリーに反対されてしまいます。
そんな折、通勤途中にクエイドは「旅行の記憶を売ります」というリコール社の広告を目にします。
早速、リコール社に赴いたクエイドは火星旅行の記憶を希望します。
しかし、いざ記憶を植え付けようとすると、クエイドは混乱して暴れ出してしまいます。
クエイドに隠された記憶を呼び覚ましてしまったのです。
トラブルを恐れたリコール社に追い出されたクエイドは帰り道で、謎の集団に襲撃されます。
さらに自宅でも……。
クエイドの隠された記憶とは?
火星に一体何があるのか?
是非、観てみてください。
学生の頃に観た時は、凄く面白くて名作だと思っていました。
リコール社の設定はもちろん。
変装セットやホログラムなど近未来アイテムも画期的だったし。
火星の描写もSF感があって、冒険心をくすぐる作品でした。
改めて観た感想としては。
やはり面白いものは面白いです。
しかし、雑な部分にも気がついてしまいました。
これは私が夢のない大人になってしまったからです。
まず、無人タクシーがオモチャみたいです。
タクシーの運転手がロボットなのですが、サンダーバードの人形みたいです。
火星のタクシーは有人なのですが、やはりオモチャみたいでした。
あと距離感が全然感じられませんでした。
例えば地球から火星まで行くのですが、唐突に着き過ぎだと思います。
それから火星の街もタクシーに乗るような距離なのか解らない感じがします。
まるで徒歩で行けそうな感じです。
もう一つ言えば、火星の窓ガラスが薄過ぎます。
水族館くらいの分厚さがあっても良いと思いますが、拳銃で穴が空くような薄さです。
火星の空気は薄く人間は宇宙服なしでは出られない環境なのに、怖すぎます。
そんな細かいところが、もの凄く気になりました。
1970年台の映画のようでした。
私の脳内でだいぶ美化されていたようです。
しかし、ストーリー部分は変わらず面白く感じました。
火星の支配者が酸素供給を支配していて、住民を言いなりにしているという設定も面白いと思います。
火星の支配者と反乱分子の抗争にクエイドがどう関わっているのかというところも秀逸だと思います。
エイリアンの遺跡だとかミュータントなんていうのも出てきますが、丁度いい未来感がSFらしさを盛り立てています。
今から思えばSFの名作古典なので、SFが好きな人は是非、一度は観ておいて欲しい映画です。
多少の古さと安っぽさは、愛嬌です。
火星はまだまだ遠いですが「旅の記憶を売る商売」は近い将来には、ありそうなサービスのような気がします。
インチキ臭いけど。