第218回目は「火花」です。
2017年の日本のヒューマンドラマ映画です。
*以降ネタバレ注意です。
お笑い芸人ピースの又吉直樹が書いた小説の映画化です。
実は私は、お笑い芸人を尊敬しています。
彼らは脚本家であり、演出家であり、監督であり、演者なのです。
4、5分のショーではありますが、より完成度が求められていると思います。
私はある種の美しさを、漫才やコントに求めてしまっています。
言い換えれば私はお笑いを芸術だと思っています。
もちろん面白いお笑い芸人がいれば、面白くない芸人もいます。
何様のつもりか解りませんが、私のお笑い芸人を見る目はとてつもなく厳しくなってしまいました。
そうこうしているうちに私はお笑いで、笑えなくなっていました。
笑えなくなった原因はもう一つあります。
私は大笑いすると、ゲロを吐いてしまうのです。
大笑いを我慢している間に、笑えなくなってしまったのです。
それでもお笑いを楽しんでいます。
漫才一本は映画一本に匹敵すると考えています。
さて、この映画はそんなお笑い芸人の人生を描いた作品です。
物語は熱海の花火大会から始まります。
お笑いコンビ「スパークス」の徳永は花火大会の地方営業に来ていました。
しかし「スパークス」は全くウケませんでした。
「仇とったるわ」と次に登場したのはお笑いコンビの「あほんだら」
徳永は「あほんだら」の神谷の情熱に心打たれて、弟子入りを申し出ます。
晴れて神谷の弟子となった徳永ですが、お笑い芸人の道は厳しく、様々な葛藤にさいなまれます。
果たして徳永はお笑い芸人として成功するでしょうか?
是非、観てみてください。
久々に感動しました。
売れないお笑い芸人の心情を見事に描いていたと思います。
監督もお笑い芸人の板尾創路なので、リアリティがあったのかもしれません。
自分の芸風を守るか、芸風を曲げてウケを狙うか。
芸人ならではの葛藤が見事に描かれていたと思います。
夢に賭ける情熱も感じ取れました。
私たちがテレビで見るお笑い芸人はほんのひと握りで、華やかな一面だけなのでしょう。
大輪の花火を上げる者もいれば、線香花火のような芸人もいます。中には火もつかないような湿気った芸人もいるでしょう。
大半がお笑い芸人だけでは食えない状況だと聞いたことがあります。
それでも続けているなんて、凄いことだと思います。
感動した要因にはもう一つ理由があります。
私の古い友人がお笑い芸人をやっています。
幼稚園から中学まで一緒でした。
彼をテレビで見たのは20年以上前に2回だけです。
多分、ほとんど誰も知らないような無名の芸人です。
それでも、ずっと芸人を続けているので、私は密かに尊敬しています。
「火花」を観ていると、そんな彼を思い出します。
今日も何処かで誰かが、夢に向かって火花を散らしているのでしょう。
私はどちらかというと、怖くて火が着けられない臆病者です。
だからこそ、憧れてしまうのかもしれません。
お笑い芸人が好きな人には、是非とも観て欲しい映画です。