第204回目は「第9地区」です。
2009年のアメリカ・南アフリカ・ニュージーランド合作のSF映画です。
*以降ネタバレ注意です。
分類としてはB級映画だと思いますが、かなり面白い作品でした。
どちらかと言うとマニア向けの映画だと思います。
しかし、SF映画が好きな人には絶対オススメの映画です。
基本はエイリアンものなのですが、地球征服にやってくるとうような単純な話ではありません。
エイリアンとの共存の物語なのです。
しかし、そこには宇宙人差別があるのでした。
ほかに類を見ない独創的な設定が魅力的です。
物語は1982年、突如、宇宙船が南アフリカ共和国のヨハネスブルグ上空に現れました。
しかし、宇宙船からはなんのアクションもありませんでした。
調査した結果、宇宙船には大勢の難民が乗っているだけでした。
宇宙人はその見た目から「エビ」と呼ばれるようになりました。
エビは蔑称なのですが、ここではあえてエビと呼ぶことにします。
かくして、地球に移住することになったエビたちですが、そこは第9地区と呼ばれるスラム街でした。
そこでエビたちは貧困と差別に喘ぎながら暮らしていました。
それから28年後、エビたちを監視する超国家機関MNUは増加したエビたちを、新設された第10地区に移転させる計画を立てていました。
主人公のヴィカスは立ち退きの同意書に、エビたちのサインをもらうために、第9地区にやってきました。
一軒一軒エビたちの家をまわるヴィカスでしたが、エビのクリストファーの家で謎の液体を浴びてしまいます。
その結果、ヴィカスの身体に変異が現れ始めました。
果たしてヴィカスに何が起こったのでしょうか?
エビたちの運命は?
是非、一度観てみてください。
この映画のテーマは反差別です。
南アフリカが舞台ということで、アパルトヘイトを主題にしていることがうかがえます。
同じ地球人同士でも差別して来たのだから、宇宙人差別はもっと酷いでしょう。
ぼろぼろのバラックに住まわされ、卵を産んでも破壊されたりします。
とても温かく迎え入れたとは思えません。
逆らえば容赦なく撃ち殺されます。
では、なぜ人類は宇宙人との共存を選んだのでしょう。
実は人類の狙いはエビたちの技術力だったのです。
エビと人類の間に立たされたヴィカスは、双方の目論見に翻弄されていきます。
前半はドキュメンタリー風に撮影されています。
外国のスラム街をニュースで見ているような感覚です。
客観的にエビが気持ち悪かったり、酷い生活をしている姿を蔑んで観てしまいます。
次第にヴィカスの視点で物語が進行していきます。
そうなってくると、エビたちの真の姿というか、内面が段々と見えてくるようになります。
なかなか上手い演出だと思います。
こうして見ると、エビたちも猫缶とかを食べたりして、可愛く見えてくる………かもしれません。
キモカワですね。
ストーリー自体は単純なのかもしれませんが、メッセージ性はかなり深いものがあると感じました。
主人公とエビの友情も見どころです。
主人公とエビのクリストファーは、ある約束をします。
果たしてその約束は守られるのでしょうか?
答えは続編の「第10地区」で明かされるかもしれません。
続編は現在、脚本執筆中だそうです。
楽しみです。
個人的には約束が果たされることを期待していますが。
映画的には大々的に裏切られた方が、盛り上がるような気がします。
是非とも続編を観てみたいものです。
まだ観ていない人は機会が有れば観てみてください。
一応、マニア向けということは念を押しておきます。
あと、甲殻アレルギーの人は要注意かもしれません。