第154回目は天と地とです。
1990年の日本の戦国映画です。
川中島の戦いは史実上の出来事ですが、ストーリー部分は創作の割合が大きいと思います。
物語は上杉謙信がまだ長尾景虎を名乗っている頃から始まります。
越後統一から恋愛、挫折、配下の謀反、離別などを経て上杉謙信へと成長する姿が描かれます。
一方、武田信玄は信濃に進軍し越後へ隣接するほど領地を拡大して来ました。
途中で信玄と謙信の間で因縁が生まれ、最終的に川中島の戦いへと繋がって行きます。
この映画は上杉謙信の半生を描いているため、場面が飛び飛びのダイジェストの様に過ぎて行く感じがしました。
なので、人間関係の描写が希薄な様に感じました。
ですが、圧倒的な風景の美しさで、時間経過を無理矢理納得させる映像美の力を感じました。
春の桜、冬の吹雪、秋の紅葉とどれをとっても美しい日本の美です。
それだけでも映像価値は高いと思います。
また、映画で重要視されているのが合戦シーンです。
上杉謙信軍は黒の鎧、武田信玄軍は赤い鎧に身をかため、これまた映像美を高めています。
当時のキャッチコピーで
「赤と黒のエクスタシー」
というフレーズがありましたが、エクスタシーを感じます。
合戦と言えば陣立というのが、見どころだと思いますが、この映画ほど陣立にこだわった映画はないでしょう。
魚鱗の陣や、鶴翼の陣、車掛の陣など視覚的に観せられたのは初めての様な気がします。
ただし、陣形重要視のため、戦闘シーンの見栄えは良いものの、迫力は些か欠ける様な気がしました。
合戦シーンが綺麗過ぎて、運動会を観ている様な気分になりました。
迫力のあるドロドロの肉弾戦とこの映画の様な戦いのどちらが現実に近いのか、私にはわかりませんが、資料的価値は高いと感じました。
戦国時代が好きな人は是非観ておいて欲しいです。
戦術、戦略が好きな人にもお勧めです。
ただし、ストーリー部分が希薄なことと、史実上川中島の戦いが明確な勝敗を分けないので、消化不良を起こす可能性もあります。
どちらかというと見た目重視という感じです。
戦国時代を描いた作品は、現代ではNHK大河ドラマくらいしか目にすることはない様な気がします。
もちろん戦国映画がないわけではありませんが、なかなか上杉謙信が主人公というのは少ないでしょう。
私は上杉謙信については、あまり詳しくありませんが、イメージでは誠実で情に厚く、好戦的ではない様な感じがしていましたが。
この映画では、なかなかに非情な一面を見せています。
しかし、戦国武将としてはその方が魅力的でした。
私の上杉謙信のイメージは天と地とに塗り替えられてしまいました。
上杉謙信が鉄砲で敵将を討ち取るシーンがありますが、私はそこがかなり印象的でした。
武田信玄も私が持つイメージとは少し違いましたが、魅力的に感じました。
とにかく美しい見応えのある作品でした。
妻女山、これってサイジョザンって読むんですね。
私はずっとツマメヤマと読んでいました。
映画の中でサイジョザンと言ってるので、私はツマメヤマとは別の場所と認識していました。
途中で気づいてビックリしました。
合戦のロケ地はカナダだそうです。
公開当時、私はカナダに行ってみたいと思っていましたが、映画音楽担当の小室哲哉が「カナダは馬糞ばっかり」と言っていて気分が萎えました。
よくよく考えると、自分らがロケ地に連れて行った馬じゃないか!
ペットの糞の始末は飼い主が責任を持って行って下さい。
そう言えば、上杉謙信が振り下ろした刀を武田信玄が軍配で受け止めるという有名なシーンがありませんでした。
ちょっと残念。