第145回目はアレキサンダーです。
2004年のアメリカの伝記映画です。
*以降ネタバレ注意です。
アレキサンダー大王の生涯を後年にプトレマイオスが歴史書に記すという形で描かれています。
アレキサンダーは私にとって歴史上で興味を惹かれる人物のベスト10に入ります。
そんな人が映画になっているのは、誠にありがたいことです。
史実を基にしているとは言え、創作の部分も多くあるので鵜呑みにはできません。
差し当たり、私にはこの映画で充分です
しかし、173分と長めの映画ですが、物足りないというのも事実です。
3部作くらいになっていれば満足できる作品になったのではないでしょうか。
私の期待としては、アレキサンダーが大帝国を築くにあたって、戦略を駆使して戦うような戦記ものを想像していました。
しかし映画はアレキサンダーの内面を描くことに焦点を置いている様に思えます。
作品としてはそれで良かった様にも思いますが、史実上の出来事として取り上げられた部分が少ない気がします。
アレキサンダーはマケドニアの王フィリッポスと母オリンピアスの間に産まれました。
問題は母のオリンピアスで、野心剥き出しでアレキサンダーを王位につけようとしています。
オリンピアスの存在がアレキサンダーの人生観、女性観に悪影響を与えたことは疑いようがありません。
良い影響は全て教師のアリストテレスから学んだ様です。
幼少期の見どころは乗馬のシーンです。
アレキサンダーが暴れ馬を乗りこなすのですが、父と母がいがみ合う中、アレキサンダーに共通の希望を見出す瞬間が描かれている様に感じました。
非常に美しいシーンだと思います。
さて、19歳で王位についたアレキサンダーは戦争に明け暮れます。
映画でクローズアップされているのは、ペルシアとのガウガメラの戦いです。
確か、マケドニア軍が4万人でペルシア軍が20万人だったと言われています。
数的劣勢をどう挽回するのか見どころです。
私としてはもう少しじっくりと戦術面を描いて欲しかったところですが、充分に迫力のある戦闘シーンです。
聞くところによると、マケドニア軍の方が兵の質が高かったのが勝因となったそうです。
バビロンの街も荘厳華麗で一見の価値がありあります。
ここが物語のピークであり、アレキサンダーの生涯で最高の瞬間だったのではないでしょうか。
当時の世界を征服した瞬間を是非観てみて欲しいです。
その後、アレキサンダーはさらなる領地を求めて東へと軍を進めるのですが、一体何を求めていたんでしょう。
バビロンより東なんて砂漠しかない様な所だし、インドは遠すぎます。
10年足らずで、大帝国を築いた手腕は見事なものですが、内政は大丈夫なのでしょうか。
砂漠をいくら征服しても領地としての魅力は無いじゃありませんか。
アレキサンダーの夢はどこまで続いたのでしょう。
もしかしたら、インドを越えて中国、日本にまで来るつもりだったかもしれませんね。
バビロン征服で満足していれば違った形で歴史に名が残ったのではないでしょうか。
あるいはバビロンで、軍備を充分に整えて、東征に臨んでも良かった様にも思います。
それにしてもアレキサンダーの幸せとは何だったのでしょうか。
戦争に次ぐ戦争で、ほぼ戦場暮らしで移動する帝国とはよく言ったものです。
しかしそんな状況では贅沢を満喫する余裕も無かったでしょう。
折角、世界中の富を独占できたというのに勿体ない限りです。
戦争が趣味で、楽しくてしょうがなかったと言うのであれば、それなりに充実した人生と言うべきかもしれません。
しかし、どう見ても過酷な生活だったように思います。
さて、映画の疑問点としては、物語がいささかアレキサンダーの同性愛に傾倒している様に感じました。
現代では理解が得られると思いますが、公開当時はそこそこに問題視されていたと記憶しています。
私としてはアレキサンダーの男色趣味はさほど重要ではなかった様に感じました。
男色と言ってもプラトニックな関係で、忌避するほどのことでもありませんでした。
なので尚更、必要だったかな?
と思ってしまいます。
アレキサンダーのマザコンやファザコンなどの内面が重要な要素を占めていることは解りますが、ちょっと比重が偏ってる気がしました。
まあ、ちょっとショッキングではありますが、意外な人間性があって良いのかなと思います。
アレキサンダー大王の生涯を描くには短すぎる映画かもしれませんが、中身はギュッと凝縮されていて良かったのではないでしょうか。
興味のある人は是非観てみてください。
ところで、IRON MAIDENというバンドの曲でAlexander The Greatという歌があります。
8分くらいの長い曲ですが、これまたアレキサンダーの生涯を歌っています。
興味があったら聴いてみてください。
曲の冒頭に
「我が子よ、この国はお前には小さ過ぎる。自分の国は自分で作れ」
的な語りが入ります。
本当にフィリッポスがアレキサンダーに言ったかどうかは分かりませんが、とても格好良く感じました。
もしそんな言葉一つで世界を征服したというなら、やはりアレキサンダーは偉大だったと言うべきでしょう。
アレキサンダー大王を語るにはこのブログも短過ぎますが、是非映画を堪能してください。