第132回目はエアフォース・ワンです。
1997年のアメリカのアクション映画です。
*以降ネタバレ注意です。
エアフォース・ワンと言えばアメリカ合衆国大統領専用機の名称と思われがちですが、実際には大統領がアメリカ空軍の航空機に搭乗した際のコールサインであるそうです。
空軍のヘリコプターに大統領が乗れば、それがエアフォース・ワンと呼ばれるらしい。
本作ではいわゆる大統領専用機VCー25が舞台となっています。
アメリカとロシアは合同作戦にてカザフスタンのラデク将軍を拘束します。
数週間後、アメリカ大統領ジェームズ・マーシャルはモスクワでロシア大統領と晩餐会を共にします。
ラデク将軍はカザフスタンを軍事支配しており、20万人近くの難民を出す悪政を敷いていました。
さらには旧ソ連を復活させようとロシアと戦争する構えを示していました。
アメリカとロシアはラデク将軍をテロリストとして逮捕したわけです。
マーシャル大統領はテロリズムに対しては国の利益よりも人道的な正義を貫くと演説します。
晩餐会を終えて、マーシャル大統領は大統領専用機で帰路に着きます。
その際、ロシアの取材クルーも同乗することになりました。
そして大統領専用機がドイツ上空に差し掛かった時、大統領専用機はテロリストにハイジャックされてしまいました。
テロリストの要求は?
大統領の運命やいかに。
という物語です。
大統領専用機内という特殊なシチュエーションでハイジャック犯と、大統領が戦うといういかにもアメリカ人が好きそうな映画です。
飛行機が好きな方は大統領専用機の内部や装備が堪能できて楽しいと思います。
派手さはあまり無いですが、ミグやF-15戦闘機や空中給油機も登場するので、航空アクションとしても楽しめます。
そして大統領がたった1人で孤軍奮闘するわけですが、なかなかに見応えがあります。
閉鎖空間の大統領専用機内で、壮絶な銃撃戦とかくれんぼが展開されるところが新鮮で緊迫感があります。
しかし疑問に思うところも多々あります。
*以降、激しくネタバレです。
まず、そもそもカザフスタンのラデク将軍を拘束した件ですが、果たしてアメリカが介入するべきだったのでしょうか?
カザフスタンの惨状を見かねて、目を瞑るよりも行動するべきというのも判らないではないですが、行き過ぎた内政干渉のような気がします。
その行動によってテロを呼び込んでしまったと言っても過言では無いと思います。
このイケイケ派の大統領を私は支持しないと思います。
少なくともカザフスタンのことは当事国もしくは国連が対応するべきで、アメリカが出しゃばるようなことではないと感じました。
2点目の疑問はいとも簡単にハイジャックされてしまう大統領専用機です。
周到な準備のもとに決行されたのだと思いますが、アッサリ乗っ取られ過ぎです。
セキュリティが甘いにも程があります。
大統領専用機がハイジャックされるなんてあってはいけないことだと思いますが、実に簡単にハイジャックされてしまいます。
そこが面白いところとも言えますが、設定が浅い気もします。
もう少し手の込んだハイジャック計画を描いても良いような気がしますが、少しリアリティーが乏しい様な気がします
さて、次は大統領はテロに屈するか、屈せざるべきかという問題です。
テロリストの目標は大統領を人質にとって、アメリカ政府に要求を飲ませることでしたが、それには失敗しました。
しかし、マーシャル大統領の妻と娘とそのほか十数人が人質にとられていいます。
要求を呑めばテロリストに屈したことになり、要求を拒めば人質が犠牲になります。
大統領としては要求を呑むわけにはいかないでしょう。
しかし、人間としては人質の命には変えられない。
苦渋の決断です。
しかしマーシャル大統領は部下は見殺しにしたくせに、自分の家族を助けるためにテロリストに屈してしまいます。
一見、大統領は家族愛に溢れるヒーローの様に見えますが、自分の家族だけが大事な私的な人間と見えなくもないです。
もちろん、それは結果論であってシチュエーション的には仕方のない部分もあったかと思います。
そりゃ、赤の他人の部下の命より家族の命が大事に決まっていますが、大統領としてはどうでしょうか?
なんだか釈然としません。
ハッキリ言えばこんな大統領は嫌だ。
と思います。
こんな奴が核ミサイルの発射キーを持っているかと思うとゾッとしてしまいます。
幸いテロリストの要求が小さいものだったので、事なきを得ましたが、核攻撃などを要求されていればどうなったでしょう。
一方、ホワイトハウスではマーシャル大統領を解任すべきだという決議案が取られますが、それは大統領を切り捨てることになります。
しかし副大統領はその案を拒否してしまいます。
身も蓋もない考え方をすれば、大統領解任が正しい選択だと思います。
しかし副大統領も人情に流されている様な気がします。
考えようによってはヒューマニズムに訴えかける良い映画だと言えなくもないですが、アメリカ政府は政治的判断の欠落したダメダメ政府として描かれてしまっています。
ついでにロシアもアメリカにペコペコしていて、もの凄くアメリカ人の自己陶酔的作品の様に感じました。
気になる点はそのくらいですが、基本的には面白かったと思います。
大統領も人間なので、危機的状況になれば仕方ないのでしょう。
大統領の資質はともかくとしてテロリストは許してはおけないので、大統領を応援するしかありません。
是非この映画を見て、もし選挙があったらマーシャル大統領に投票するかどうか考えてみてください。
因みに私が大統領だったら、即決でテロリストの要求を呑んでしまったと思います。
マーシャル大統領、偉そうな事言ってごめんなさい。