第131回目はアルキメデスの大戦です。
2019年の邦画です。
*以降ネタバレ注意です。
私が小学生の頃、クラスメイトの間で戦艦のプラモデルが流行っていました。
ある日、皆んなで友人宅に自慢のプラモデルを持ち寄って遊ぼうということになりました。
大和や武蔵やビスマルク、ニュージャージーなどもあったように思います。
日本の戦艦もさることながら、海外の戦艦も格好良い。
お互いの艦船を褒め合う中、私も自慢の一品を取り出しました。
「何で空母やねん!!」
友人は激しくツッコミを入れて来ました。
友人たちには空母という発想はなかったようで、意表を突かれたような顔をしていました。
「これからは航空機の時代なのだよ!」
私は得意げに付属の戦闘機を甲板に並べました。
「おおーっ」
見栄えのしない空母も戦闘機を並べればそれなりに格好良く思えた様です。
そんな戦艦か空母かどちらを建造するべきか?
という映画です。
時は1933年、海軍では新造戦艦をめぐって会議が執り行われていた。
永野中将と山本五十六少将は航空主兵主義であり航空母艦の建造を望んでいたが、対して平山中将は大艦巨砲主義であり超巨大戦艦の建造を立案していた。
会議は巨大戦艦に傾きつつあり、山本五十六は打開策を考える。
巨大戦艦の建造費が、空母の建造費よりも安く見積もられている事に着眼した山本五十六は、虚偽の申告であるとして糾弾する計画を立てた。
そこで主人公である天才数学者の櫂直(かい ただし)を少佐に任官し調査に当たらせる。
期間は2週間足らずしかないにも関わらず、軍事機密のために情報が手に入らない。
果たして櫂少佐は平山中将の不正を暴くことが出来るのだろうか?
という物語です。
超巨大戦艦とはご存知の通り大和のことなんですが、その建造秘話となっております。
大和が好きな人は必見の映画です。
是非とも観てみてください。
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私は大和が最も美しく最強の戦艦だと思っていますが、それは残念ながら大和単体の話なのです。
やはり時代は航空機が主力となり、巨大戦艦など的に過ぎないのです。
海軍は不敗のシンボルとして大和建造を欲しているのですが、山本五十六にとっては建造費をみすみすドブに捨てる様なものだと考えていました。
それに最強の戦艦の存在が戦争に勝てるという幻想を国民に抱かせてしまうという懸念もあります。
大和にはそれだけの魅力があったのです。
大和建造が日米開戦の引き金になるという大胆な発想の映画です。
櫂直は大和建造を阻止して戦争を回避するために奔走します。
前半は少し盛り上がりに欠けるかも知れませんが、終盤は個人的には感動しました。
おそらく大和について何も知らない人には、あまり伝わらない映画かも知れません。
映画の冒頭に大和の最期の戦闘シーンが入りますが、そこで大和と戦中の日本の姿を重ねて合わせて観ておいて欲しいです。
負けると分かっていながら戦争に踏み切った日本と、沈むと分かっていながら建造された大和。
奇しくも大和=日本と同じ意味の名をもつ船が運命を共にして沈みゆく。
そのシーンを冒頭に入れたのは上手い演出だと思います。
大和について知らない人は、ガッツリ冒頭シーンで大和を応援しながら観てみてください。
それにしても、映画の内容としては大和の建造費を調査するだけなのに、ここまで面白い作品になっているとは予想外で大満足でした。