第113回目は「八つ墓村」です。
1996年の日本の推理映画です。
*以降ネタバレ注意です。
戦国時代とある山中の村に尼子氏の落ち武者が8人流れ着いた。
しばらくは落ち武者と村人は共存していたが、尼子氏と敵対する毛利氏が落ち武者に賞金をかけたため、村人は欲に目がくらんで落ち武者8人を騙し討ちにした。
落ち武者は村を呪いながら死んでいった。
その後、村の盟主である多治見家の当主が発狂し村人8人を殺してしまうという事件が起こる。
村人たちは尼子氏の落ち武者の祟りだとして、死体を丁重に埋葬しお墓を建てた。
そして、その村は八つ墓村と呼ばれる様になった。
時は流れて、昭和24年。
石鹸工場で働く寺田辰弥は多治見家の先代、多治見要蔵の妾の子であることを知らされる。
多治見家には跡取りがおらず、辰哉を後継者にするため故郷である八つ墓村に帰ることを求められる。
ところがそのことをキッカケに、第一の死亡者が出る。
これは連続殺人事件なのか?
それとも八つ墓村の祟りなのか
金田一耕助が捜査に乗り出す。
という物語です。
八つ墓村の映画はこれまでに3本制作されていて、そのうち1977年版と1996年版が動画サイトで鑑賞可能だったので、迷いましたが1996年版を観ることにしました。
決め手は、監督が市川崑だったことです。
ここまで市川崑監督の金田一耕助シリーズを5作品観て来ましたが、これが6作品目で前作から20年の開きはありますが、正当な続編であると考えました。
主演は石坂浩二から豊川悦司に変わってしまったのは残念ですが仕方ありません。
しかし、むしろこの際全作豊川悦司でリメイクして欲しいと感じました。
一方で、1977年版は金田一耕助役が渥美清で、申し訳ないですが「寅さん」のイメージが強くて観る気を削がれたというのもあります。
さて肝心の内容ですが、なかなかのの良作だと感じました。
*ここからさらにネタバレ強め注意です。
相変わらず、登場人物が多いので人間関係を把握することに苦労しますが、今までで一番解りやすかったと思います。
今回は推理自体は簡単でした。
私は犯人と動機と証拠を全て当てることが出来ました。
シリーズで1番マヌケな犯人だといえるでしょう。
これまでの犯人は割と物証がなく、犯人が強硬にしらばっくれればなんとか逃げきれそうな犯人ばかりでしたが、今作は言い逃れのできない感じでした。
そういう意味では推理モノとしては物足りないないのではないでしょうか?
私は自分の推理が当たって大喜びですが、最後まで犯人が判らない様な作品の方が見応えがあるのも事実です。
しかし、この作品の本質は犯人逮捕ではないのです。
この事件と人物の因果関係とその背景が解き明かされた時、なんとも言えない虚しさが込み上げてきます。
事件というか多治見家の真相を解き明かした金田一耕助はやはり名探偵です。
昭和初期の風景や空気感が映像化されていて、美しい映画だと感じました。
そこに祟り的な要素を盛り込んで、うすら怖い作品になっています。
金田一耕助に興味がある方は是非観てみてください。
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さてさて。
1996年版が面白かったので、勢いで1977年版も鑑賞することにしました。
簡単に解説しておきます。
舞台は公開当時の現代(1977年)にアレンジされています。
私個人としては作品を現代にアレンジするのは好きではありません。
その時代だからこその考え方や因縁があると思うからです。
そして、主人公は寺田辰哉で、金田一耕助は脇役であり、あまり活躍しません。
ラストの見解も私は金田一耕助に共感が持てませんでした。
私が知っている金田一耕助とは別人の様です。
映画の雰囲気はホラー色強目です。
というか祟りが本物です。
終盤の祟りの恐怖シーンの合間で金田一耕助が、呑気に推理を披露しているところが面白かった。
印象としては推理モノとしても、
ホラーとしても、
中途半端という感じがしました。
ある意味両方楽しめると言えなくもないです。
単体で観れば面白いですが、見比べると少し残念な気がします。
オススメとしては1996年版を先に鑑賞して忘れた頃に1977年版を観るのが良いと思います。
金田一耕助の作品はたまにテレビドラマ化されたりする様なので、機会があれば観てみて下さい。
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