第44回目は羊たちの沈黙です。
*以降ネタバレ注意です。
1991年のアメリカの映画です。
主人公はジョディ・フォスター扮するFBI実習生のクラリス・スターリングです。
そして、もう一人の主人公がアンソニー・ホプキンス扮する、ハンニバル・レクター博士です。
クラリスは連続誘拐殺人事件の犯人、通称バッファロー・ビルの捜査のため、監禁中の凶悪殺人犯である精神科医レクター博士に犯人のプロファイリングを依頼しに行く。
餅は餅屋に聞け、ということなのだろうけど、猟奇殺人犯のことは同じ猟奇殺人の精神科医が詳しいだろうということだ。
最初は協力を拒否していたレクター博士もクラリスに興味を持ち協力をするようになる。
レクター博士はクラリスの過去のトラウマを聞き出し、それと引き換えに情報を伝えます。
クラリスとレクター博士の間には師弟関係あるいは精神科医と患者という関係が芽生えたのだと思います。
羊たちの沈黙というタイトルもそこに繋がっています。
レクター博士の圧倒的な存在感がこの映画の見どころです。
静かな狂気がヒシヒシと伝わってきます。
多少グロい部分もありますが、心理サスペンスとして結構面白かったと思います
さて、私がこの映画で最も怒りを感じた部分が一箇所ありました。
バッファロー・ビルに上院議員の娘が誘拐されるのですが、そこで本格的にレクター博士に協力を依頼するということ。
平民の娘なら本気で捜査しなかったのだろうか?
そしてクラリスが捜査に協力をすれば条件の良い監獄に移送するとレクター博士に約束するのだが、これが嘘だったこと。
私はクラリスに裏切られた気分になりました。
アメリカでは司法取引が法律で認められているのに酷いと思います。
私は子供頃に悪戯をして、先生に捕まり「正直に言えば怒らない」と言われたのに、あとでめちゃくちゃ怒られたことがある。
その時、日本には司法取引という制度が無いと知らされました。
私は騙されたのだ。
もし警察に、白状すれば罪を軽くしてやるなどと言われても、それは100%嘘に違いない。
それは良いとして。
レクター博士は騙されたことをあっさり許してしまいます。
その辺りもレクター博士の不敵な不気味さが表現されていました。
知能が高く教養があり、気品と美学を備えた紳士であるレクター博士は何でも見透かしているような、何を考えているか解らないような、底知れぬ威圧感を持っています。
この映画はレクター博士を観るための映画です。
バッファロー・ビルの事件もレクター博士を知るための材料として使われています。
今のところ、レクター博士は私の観た映画の中で最も恐ろしい狂人ではないでしょうか。
一度観て、レクター博士をプロファイリングしてみて下さい。