第30回目はパトリオットです。
*以降ネタバレ注意です。
2000年のアメリカ映画です。
ローランド・エメリッヒ監督、
メル・ギブソン主演。
ところで、私の職場でのこと。
10年前のある日、事務所で昼休みに社長と若手社員とテレビを観ていた。
最近の若者には愛国心がないという趣旨の内容が放送されていた。
「ワシらの若い頃はお国のためにと言って、滅私奉公で命がけで戦争に行ったものだ。
こんなことでは戦争には勝てない。嘆かわしい」
と社長がのたまった。
大嘘である。
社長の産まれたのは戦後である。
戦後にはそれなりの苦労もあったとは思うが、お国のために命を張ったことはないはずである。
「お国から命令が来たら、逆らうことなく戦争に行かねばならん」
と社長は愛国心をうたう。
そんな話を得意げに延々と話していた。
少々ミリタリーマニアの若手社員もまんざらではなく、話を聞いていた。
しかしこの社長の話には裏がある。
すぐにタダ働きをさせたがる社長の言いたいことは、
「社長の命令に逆らわず会社のために滅私奉公でタダ働きしろ」
と暗に言いたいのである。
私は内心呆れて、黙って聞いていた。
しかし、話後半になって私にも
「お国を守るためにカズマくんも戦争に行かねば」と行ってきたので。
「そんな国家(会社)は滅びれば良い」
と返事をした。
「国(会社)の為に人(社員)があるんじゃない。人(社員)の為に国(会社)があるんだ。個人の自由と尊厳を守れない国家(会社)なら滅びてしまえ」
社長は唖然とし、若手社員は感心しながら聞いていた。
「日本は戦争しない国だ。愛国心があるなら戦争を回避することに誇りを持て、自分の命と家族の命が危険なら武器をとれ、国を潰して家族が助かるなら、国家を潰せ」
私の言葉に若手社員は納得してくれたようだ。
社長は無言だった。
愛国心を煽って戦争に駆り立てるなんて、持ってのほかだと思う。
さてここからは映画の話です。
主人公ベンジャミン・マーティンは愛国者で知られる過去の戦争の英雄だ。
現在は牧場を営んでいて独立は望むものの、武力衝突には反対だった。
しかし、イギリス帝国軍は残酷で、民間人も捕虜も虐殺していった。
ついにはベンジャミンの家族まで惨殺されてしまった。
それによってベンジャミンは参戦を決意する。
彼はパトリオットではなく、リベンジャー(復讐者)となったのだ。
イギリス帝国軍は残虐非道で倒さなければならない。
大義としてはアメリカ独立のためだが、真実は家族を守るためなのだ。
当時の戦争は隊列を組んで、真っ正面から銃を撃ちあうのが、主流のようだ。
当然、甚大な被害が出る。
そして隊列を乱し、退却した方が負けというわけである。
現代では考えられない昔の戦い方だ。
ベンジャミンはゲリラ戦で戦果をあげて、イギリス帝国軍を打ち負かしていく。
きっとアメリカ人にとっては素晴らしい映画に違いない。
戦争中は解らないが、独立戦争後にはアメリカ人は愛国心を持ったに違いない。
国によって愛国者のあり方は違うと思う。
私は日本人なので、愛国者として平和を守りたいと思う。
と言っても、私にできることは選挙に行くことくらいしかできないが。
少なくとも、若者に国の為に死んでこいなどと言うような老人にはなりたくない。
諸外国の人に約束しておくよ。
日本人は何があっても戦争はしない。
私の約束など取るに足らないが、多くの日本人がそう思っているはずである。
その人たちこそが日本の愛国者であると信じている。
映画は面白かったですが、私はパトリオットという言葉が大嫌いという話でした。