第26回目はノア・約束の舟です。
*以降ネタバレ注意です。
私には映画を観るにあたって、3個のマイルールがある。
一つ目は
・奇跡を信じること
物事が都合よく進んだり、偶然が重なったり、または物理的に有り得ないことが起こっても批判しない。
奇跡が起こったんだよ。
二つ目は
・俳優を責めない
俳優の演技は下手じゃなくて、下手っぽい人を上手に演じていると解釈する。
〇〇〇〇さんってどの役やっても〇〇〇〇さんだね。
ということもあるが、〇〇〇〇さんは〇〇〇〇さんっぽい登場人物を完璧にこなしていると考える。
三つ目は
・原作と比較しない
原作は原作、映画は映画。
原作と違うとか、史実と違うとか、現実では起こりえないとか、考えない。
以上が私の映画を観る上での心構えである。
もちろん、私はこの心構えが出来ていない。
それ故に、自分に言い聞かせているのだ。
この映画観賞三原則は私にとって、苦行でもある。
今回観た映画は聖書のノアの方舟の話の映画化だ。
2014年のアメリカ映画です。
第一印象は「聖書と違う」でした。
実際には「私の持っているノアのイメージと違う」が正しいと思う。
聖書にはノアの方舟について、そんなに詳しく書かれているわけではない。
ザックリ言えば、ノアとその妻、3人の息子とそれぞれの妻のみが神に救われ、残りの人類は洪水によって洗い流されるということだ。
ノアがどんな人物かは詳しくは判らない。
ただ想像するに神に選ばれるくらいなんだから、罪と汚れを知らぬ善良なお爺さんであると思い込んでいた。
しかし、映画のラッセル・クロウ扮するノアはバリバリの武闘派である。
悪人に容赦なく、家族を守るためなら殺人もいとわない。
また家族であろうとも神のためなら、殺してしまおうという考えなのだ。
「イメージと違う」
私は先入観を棄てることに必死だった。
聖書ともう一つ違う点は、ノアの家族構成だが、3人の息子のうち妻がいるのは1人だけだった。
しかも、ノアの家族で人類は滅亡するというのだ。
結末がどうなるのかは映画を観て欲しい。
とにかく、ノアは狂信者である。
聖書に詳しい人も、そうでない人もノアの異常さに恐怖するのではないだろうか。
映画後半は方舟という密室にヤバいやつがいるという「シャイニング」ばりのサイコスリラーにもみえます。
一方で、神に滅ぼされるカインの一族だが、聖書では特に記述がなく、ただ信仰を忘れ腐敗と堕落、罪に溺れたということで、滅ぼされるのだったと思う。
私のイメージでは(というか藤原カムイの漫画『旧約聖書』による)カインの一族は洪水が起こることを信じず、ノアを嘲笑うだけで終わりなのだが。
映画では方舟を乗っ取るためにノアを襲撃するのだ。
全く想像していなかったバトルシーンだ。
それくらいしなければ映画は盛り上がらないだろう。
カインの一族のトバル王は言う
「自分たちの生死は自分で決める」
私はノアではなく悪のトバル王に共感してしまう。
ノアの方舟にはすべての鳥や動物のつがいが1組ずつ乗っているが、トバル王は人間こそが助かるべきだと言う。
私もそう思う。
自然に滅びるならまだしも、神に滅ぼされるなんてまっぴらごめんだね。
私は映画の中でノアを倒す側の視点になっていた。
ある程度、聖書に関心がないとノアに感情移入することは難しいと思います。
聖書に詳しい人ほど、衝撃を受ける作品ではないでしょうか。
ところで、子供の頃にノアの方舟の話で、神の意思に反して、洪水で溺れている人を助けてしまい、
そのせいで再び悪がはびこったと言う映画かアニメを観たように記憶しているのですが、聖書にはそんな記述はありませんでした。
何の作品か心当たりのある人は教えて下さい。